4月からの電力自由化を前にして購入先を悩む人が増えています。東京電力福島第1原発の事故や地球温暖化を考え、再生可能エネルギーを選びたいと思っている人も多いはず。
全体で20兆円超といわれる電力市場。300社以上がひしめくと予想されていますが、いずれにしても国民の生活に欠かせない電気を扱うことを肝に銘じてもらいたい。公的な使命からいっても電力会社は公明正大さをまとっていなければなりません。
住民のために安心・安全に電気を届ける。その義務を負った電力会社の旧経営陣が、きょう強制起訴されます。原発事故を起こした東電の元会長ら3人に対し、必要な対策を怠り、多くの人を死傷させたとして。
市民でつくる検察審査会の議決によると、東電は事故が起きる何年も前から巨大地震と大津波を予見していました。それによって炉心損傷や全電源喪失に至る危険性があることも。ところが、「安全よりも経済合理性」を優先させた幹部たちは対策を先延ばし、時間稼ぎまでしていたと。
取り返しのつかない原発事故を招きながら、自然災害を理由に「想定外」とする言い逃れは通用しません。しかも予見しながら、意図的に対処しなかったとなれば犯罪行為です。
原発事故の責任を問う初めての刑事裁判。同時にそれは、最悪の事故から何も学ばず、相次いで原発を再稼働させている安倍政権の無責任さを糾弾することにもなります。事故からもうすぐ5年。あのとき胸に刻んだ、原発のない日本をいま一度。
(「しんぶん赤旗」2016年2月29日「きょうの潮流」より転載)(見だし=山本雅彦)