関西電力は2月26日、高浜原発4号機(福井県高浜町)を約4年7ヵ月ぶりに再稼働させました。同3号機に続き、全国で4基目。再稼働は原発事故の被災者の苦しみと圧倒的多くの国民の不安に背を向けた暴挙です。
4号機では20日、原子炉補助建屋内の堆積制御系で、原子炉などを冷やす1次冷却系につながる配管から放射性物質を含む水が漏れたばかりです。関電は漏れた原因をボルトの緩みがあったと発表。これは、関電の安全チェック体制が機能していないことを示していますが、他に不具合がないか再度点検することなく、予定通り再稼働を強行しました。
県内、3団体が抗議、運転中止を申し入れ
原発問題住民運動福井県連絡会と原発住民運動福井・嶺南センター、原子力発電に反対する福井県民会議は、26日午前11過ぎ、原子力事業本部(福井県美浜町)を訪れ、八木誠社長宛の抗議文を手渡しました。林広員・福井県連絡会事務局長が抗議文を読み上げ、回答を求めましたが、担当職員は「上に伝える」と述べるにとどまりました。この抗議には、福井県民会議から宮下正一・事務局長ら、福井・嶺南センターからは山本雅彦・幹事が参加しました。
高浜原発北門前で抗議、申し入れ・・発電所職員は無視し、受取拒否
午後1時からは、高浜原発のある音海半島の突端で、若狭の原発を考える会(木原壯林・代表)らが呼びかけた抗議集会が開かれ、渡辺孝・高浜町議が「再稼働は、町民の願いに反し、怒りをおぼえる」と話し、集まった多くの参加者にお礼をのべました。
その後、約50名で、音海から高浜原発北門前まで、パレードしました。
同北門前では、警察や警備員が厳重に警戒する前で、「再稼働反対!」「子ども守れ!」「再稼働する八木(社長)はやめろ!」「原発推進する安倍はいらない!」とシュプレヒコールしました。
前出の県内3団体は、再稼働に抗議する抗議文を手渡そうと、五十嵐正夫・県連絡会幹事がマイクで「黄色いヘルメットをかぶった、関電職員は受け取ってほしいと」要望しましたが、職員が無視したため、抗議文を読み上げ、運転停止を求めました。
参加した女性はマイクで、「水漏れがあったばかりで、今、4号機周辺で煙(水蒸気)が上がっているが、本当に大丈夫か不安になる。子や孫たちの未来のためにも、再稼働は止めてほしい」と訴えました。
午後5時過ぎ、4号機の再稼働の情報が報道されると、「2・26高浜原発4号機再稼働阻止!現地緊急行動」に参加した一同で、「満腔の怒りを込めて弾劾し、抗議します」という抗議文を読み上げ、即時運転停止を求めました。
(2016年2月26日、山本雅彦)
抗議文全文
2016年2月26日
関西電力株式会社 社長 八木 誠 殿
原発問題住民運動福井県連絡会
原発住民運動福井・嶺南センター
原子力発電に反対する福井県民会議
高浜原発4号機の再稼働に抗議する申入書
貴社は、高浜原発3号機につづき、本日、4号機を再稼働させようとしている。
周辺には15基(一基は廃炉作業中)の原発が林立しているが、集中立地による事故の危険性は検討されていない。また、30年超えの老朽原発である4号機には、初のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が4体装荷されたが、新規制基準でプルサーマルの安全性を評価する審査基準(規則・ガイド)はなく審査はしていない。さらに、使用済MOX燃料は再処理の方法が決まっておらず持ち出す場所がないため、半永久的に高浜に置かれることになると思われる。その上、MOX燃料は猛毒のプルトニウムを含むため、事故が起きた場合の被害は福井県だけでなく京都府や滋賀県など近畿や、1,450万人の水源である琵琶湖が汚染されるなど大きな被害が及ぶのにもかかわらず、避難計画や事故対策は未確立で不十分なままである。
原発事故から5年になる福島では事故は未だ収束しておらず、事故を起こした原子炉には近づくこともできず、多くの住民が痛苦の避難生活をいまなお続けている。安倍晋三政権は、福島原発事故の教訓を生かさず、原子力規制委員会の審査に「合格」した原発は再稼働させると推進の姿勢を露骨に示し、貴社を含め各電力会社は原発停止中の火力発電所の燃料費節約など、経済活動を優先させるため再稼働を急いでいる。再稼働は原発事故の被災者の苦しみと圧倒的多くの国民の不安に背を向けたものである。
貴社と政府は、規制委の審査合格を再稼働の根拠にしているが、高浜原発はもともと福井地裁が昨年4月、「規制基準は緩やかにすぎ(る)」と、再稼働を差し止める仮処分を決定した原発である。貴社が異議を申し立てたため、昨年末同じ福井地裁が仮処分を取り消したが、その根拠は規制委や貴社の言いなりで、司法の後退が厳しく批判されている。住民側は今年1月、高裁金沢支部に抗告し、3月11日には福井地裁に運転差し止めの本訴が予定されており、その点でも再稼働を急ぐ道理はない。
さらに、政府の核燃料サイクルは破綻し、使用済核燃料や高レベル放射性廃棄物の行き場もない。電気は足りており、再稼働すれば地球温暖化対策にも逆行する。このような、全く道理のない貴社の高浜原発4号機の再稼働の強行に満身の怒りをこめて抗議するものである。
特に、新規制基準に違反する行為を規制委自ら犯し、貴社もそれを求めていることは重大である。1つは、電気ケーブル不正敷設問題は、運転中に火災事故が発生すれば重大事故は避けられない。しかし、規制委は貴社に対し、調査・報告義務を免除している。2つは、福島事故の教訓を踏まえ免震構造で放射線遮へい性能等を有した免震事務棟は、事故時に中央制御室に代わる重要施設であり、この完成なしに再稼働は論外であるにもかかわらず、これも規制委は免除している。3つは、過酷事故時に、炉心冷却の確保と放射能拡散防止に欠かせないフイルター付き格納容器ベントの設置は、コアキャッチャーが設置されていない高浜原発では必要不可欠だが、これも規制委は免除している。4つに、地震・津波対策について、基準地震動を決める場合、考慮しなくてはいけない原発周辺の地下構造を掌握することと、地盤特性の不確かさなどを考慮せずに、省いて基準を通したとの指摘がある。よって、これら新規制基準に反して認められた高浜3、4号機の再稼働に抗議し中止を求めるものである。
以上
「2・26高浜原発4号機再稼働阻止!現地緊急行動」決議文
原発が、人類の手におえる装置でないことは、福島の大惨事が大きな犠牲の上に教えるところです。原発事故から5年近くになる福島では、避難された10数万人のほとんどが未だに避難生活を強いられています。長期の避難生活は、健康をむしばみ、家族の絆を奪い、大きな精神的負担となっています。多くの方が避難生活の苦痛で病死され、自ら命を絶たれました。
一方、福島事故で溶け落ちた原子炉は、高放射線で、今でも内部は殆ど分かっていません。汚染水は垂れ流され続け、汚染土壌の除去・除染はごく一部の地域の表層に限られています。それでも、安倍首相は、福島事故はコントロールされていると、世界に向かって大嘘をつき、人々に犠牲を強いる原発の再稼働を推進しています。
ところで、関西電力は、1月29日、危険度が高い加圧水型・MOX燃料原子炉であり、30年越えの老朽原発である高浜3号機の再稼働を強行し、今日、営業運転を開始すると言われています。また、同じく老朽な4号機は、再稼働準備中の去る20日に、汚染水漏れのトラブルを起こしたにも拘わらず、その再稼働も、先ほど、強行しました。満腔(まんこう)の怒りを込めて弾劾し、抗議します。
他方、原子力規制委員会は、40年越えの超老朽高浜原発1、2号機まで、国民騙しの新規制基準で審査し、一昨日、審査書案を取りまとめ、適合の判断を示しました。この暴挙を、許してはなりません。
さて、老朽原発が、事故率の極めて高い原発の中でも、とりわけ危険であることは、昨年8月に再稼働された川内原発1号機が、再稼働10日後に早速、復水器冷却細管破損を起こしたこと、高浜原発4号機が、再稼働準備中に汚染水漏れを起こしたことからも明らかです。何れも、重大事故に繋がりかねないトラブルです。川内原発のトラブルは、原子炉内の配管腐食が深刻になっていることを示しています。高浜原発の汚染水漏れについて、関電は、「弁のボルトの締め付け不備が原因」と事もなげに発表しましたが、このトラブルこそ、老朽原発が点検し難い構造を持つ施設であること、電力会社の点検・検査体制が弛み(たるみ)切り、彼らが、安全を全う(まっとう)する能力を持ち合わせていないことを、具体的に物語っている
のです。また、このように多発するトラブルは、老朽原発の再稼働にお墨付きを与えた新規制基準が、世界で最もいい加減な基準であることを明白に示しています。
以上のようにトラブルが多発する老朽原発ですから、その危険性は多くの人々が警告しています。したがって、電力会社、政府、規制委員会がこの警告を無視して再稼働を強行して、事故が起こったら、それは、彼らの故意による重大犯罪です。
原発を再稼働させてはなりません。原発は、時間的、空間的に、とんでもない規模の重大事故を起こしかねないからだけではありません。原発を運転すれば、何万年も保管し。なくてはならない、使用済み核燃料が蓄積するからです。使用済み核燃料の処理・処分法はなく、長期にわたる安全保管法もありません。保管地は、子子孫孫まで放射性廃棄物の危険に脅かされるので、永久保管はもちろん、中間貯蔵を受け入れる場所すらありません。原発は、人類の手におえる装置ではないのです。
それでも、今、政府、電力会社、規制委員会は、矢継ぎ早の再稼働を企てています。この再稼働の流れを大きな反撃もなく許せば、彼らは、増長して、伊方原発、大飯原発など、全国の原発の再稼働を加速するでしょう。さらに、原発の新設まで企てるでしょう。再稼働された原発の安全対策も怠るでしょう。
原発事故は、自然災害とは異なります。地震や火山噴火のような自然災害を止めることはできませんが、原発事故は止められます。原発は人が動かしているのですから、重大事故が起こる前に、人が原発全廃を決意して、原発全廃の行動に起てば良いのです。
本日、ここ高浜原発前に結集した私達は、決意を新たにし、電力会社、政府、規制委員会の心胆を寒からしめるような行動に決起し、原発の即時全廃を闘いとることを決議します。
2016年2月26日
2.26高浜原発4号機再稼働阻止!現地緊急行動 参加者一同