東京電力福島第1原発事故から間もなく5年を迎えるなか、事故を引き起こした国や東電に損害賠償を求めて訴訟を起こした各地の原告団が2月13日、国や東電による被害者の切り捨てと分断を押し返し、連帯して被害者救済を勝ち取ろうと「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」を結成しました。連絡会に加わったのは、各地で提訴した裁判のうち21原告団(原告数9645人)。
東京都豊島区での結成集会には、約180人が集まりました。
福島原発避難者訴訟の原告団長、早川篤雄さん(76)が開会あいさつし、一方的な賠償基準により被災者は分断と切り捨てで二重の苦しみを受けていると強調。「これまでの公害訴訟は、原告の置かれた状況の違いを超えた団結で勝利してきた。今日を境に、皆さんと手を携え必ず勝利しよう」と呼びかけました。
「生(なり)業(わい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告団長、中島孝さん(60)は、「原発が持つ根本的な危険性、矛盾を見通すと、原発に依存しない社会を目指していくことは不可欠の道筋」と述べました。
集会では、丸川珠代環境相が、年間被ばく線量1ミリシーベルト以下に定めた国の除染目標に「根拠がない」と発言したことをめぐり、怒りの声も上がりました。
国と東電の法的責任を徹底的に追及し、原状回復と完全賠償を求めることや、国など行政に、避難用住宅の長期・無償提供など被害者救済策を要求するとした結成宣言を確認しました。
日本共産党の笠井亮、高橋千鶴子両氏をはじめ民主党、維新の党、社民党の各国会議員がメッセージを寄せました。
(「しんぶん赤旗」2016年2月14日より転載)
原発訴訟全国連結成・・“手つなぎたたかい抜く”被災者の尊厳回復へ
2月13日に東京都内で開かれた「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」結成集会。参加者は決意をこもごも語りました。
福島県浪江町からは、津島地区住民のほぼ半数が原告に加わる「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」の今野秀則団長が発言しました。「原発事故のために不条理にも平穏な生活を突然断ち切られ、なれ親しんだ生活空間から切り離された。喪失感、空虚感、仮の生活を強いられる漂流感は耐え難いほどつらい」とのべました。「山林が8割を超える津島地区で森林除染をしないのは、地域住民に戻るなというのに等しい」と国の政策を批判。「原状回復を求めることは人間の尊厳を回復すること」と訴えました。
福島県郡山市から大阪市に母子避難している原発賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんは、「0歳で大阪に連れてきた私の娘は、“父親と一緒に暮らす”という生活を知りません。3歳の時に避難した息子は、福島県民でありながら大阪の小学校に入学。関西弁を話すようになった」ことを紹介。「母子避難で父親との離別を強いられている」と告発しました。その上で「避難の権利」を確立し、「避難した人も残った人も帰還した人も、普通の暮らしを取り戻し、個人の尊厳を回復させる必要がある」と強調しました。
福島原発かながわ訴訟原告団の村田弘団長は、歴代の環境相が「あとはカネ目でしょ」とか「1ミリシーベルトに何の根拠もない」と言い放ったことに抗議。「どこまで私たちを侮辱すれば気が済むのでしょうか。怒りは燃え上がるばかりです」とのべ、連絡会の結成について「反撃のとりでができました。何重にも手をつないで、たたかい抜きましょう」と決意を新たにしていました。
(「しんぶん赤旗」2016年2月14日より転載)