今年の電力9社の株主総会で、各社のトップがそろって早期の原発再稼働を明言しました。
北陸電力の金井豊社長が「(志賀原発は)安定供給の要であり、競争力の源泉」と語ったように、理由は決まって原発の市場競争力です。同原発の敷地には、原子力規制委員会が「活断層の可能性を否定できない」と評価した断層があります。
中国電力の苅田知英社長も、上関原発の新規建設計画について「これまで以上に重要な経営課題だ」と述べました。電力業界関係者は「2030年の原発比率を20〜22%とした政府の電源構成案を達成するには、新増設が必要だというのは業界の共通認識になっている」と語ります。
福井県大飯原発の再稼働が問われた裁判で、福井地裁は「生存を基礎とする人格権」こそ最高の価値であり、人格権と経済性の問題を並列で論じること自体許されないと、明快な差し止め判決を下しました(2015年5月)。経営優先の発言は、人格権を軽んじた暴論です。
同時に、世界では原発の市場競争力が急速に揺らいでいます。なかでも新増設は深刻です。
英国で新規建設されるヒンクリーポイントC原発は、市場競争力が見込めないため、英国政府が35年間も割高な固定価格で電力を買い取ることになっています。そうした手厚い国家保護を受けているにもかかわらず、同事業を請け負う仏企業は4月に、事業費の大幅増が必要となり、その投資決定が下るまで作業を凍結すると発表しています(原子力産業新聞4月6日付)。
21世紀政策研究所(経団連のシンクタンク)は13年、英国の買い取り制度を日本も参考にするよう提言しています。原発に競争力がないことは、当人たちは百も承知なのでしょう。
(佐久間亮)
(「しんぶん赤旗」2015年7月7日より転載)