停止で貿易赤字?
ポイント
・原因は原発依存政策
・海外生産増え赤字に
・燃料高・円安も影響
エネルギー基本計画案は、原発停止による化石燃料の輸入増加で2013年の貿易赤字が過去最大の11・5兆円になったとし、経済に悪影響を与えていると書きます。
輸入燃料費が増えているのは、歴代政権がとってきた原発依存が原因です。原発依存を改めない限り、原発事故が起きるたびに化石燃料の輸入増を繰り返します。
貿易赤字の最大の原因は、大企業が生産拠点を海外に移し、円安になっても輸出が増えないことです。政府の試算でも原発停止による化石燃料の輸入増は3・6兆円。ニッセイ基礎研究所のリポートは「原子力発電所が再稼働したとしても、貿易収支が大きく改善することは難しい」と指摘しています。
3・6兆円も過大です。輸入品の影響は額と量に分けて分析します。原発事故後、天然ガスの輸入額は2倍になる一方、輸入量の伸びは1・25倍にとどまっています。輸入量の増加以上に、投機による燃料高騰や円安が重要な役割を果たしているのです。(グラフ上)
政府も3・6兆円のうち約1・1兆円は燃料高騰と円安の影響だと認めています。
原発からの段階的撤退を進めているドイツでは、再生可能エネルギーの普及を進めたことでエネルギー輸出国になっています(グラフ下)。再生可能エネルギーで雇用も40万人近く増やしています。
日本環境学会の和田武前会長は「再生可能エネルギーは日本経済再生の力になり得る」と語ります。太陽光や風力など地域に存在する資源を生かし、地域に資金が循環する仕組みができれば、疲弊した地域経済を立て直すこともできると力説します。
「原発は地域に交付金をばらまき、地域をお金に従属させる。再生可能エネルギーなら、地域の未来に展望を描くことができる」(和田さん)
温暖化の対策に?
ポイント
・石炭火力と一体推進
・国民の不安感情悪用
・ドイツは20%以上減
基本計画案が、原発停止で火力発電が増え、温室効果ガスが8300万トン増えたとしているのも、原発依存の失敗を反省しない議論です。原発依存を改めなければ事故のたびに温室効果ガスが激増するのは、化石燃料の輸入量と全く同じです。
1970年代の石油危機後、日本は石油に代わるエネルギー源として原発と石炭火力発電をセットで推進してきました。発電量を需要に合わせて調節できない原発の欠点を、安価な石炭火力で補ってきたのです。
石炭火力は温室効果ガスを大量に排出します。原発と石炭火力を推進した結果、日本は温室効果ガスを増やし続けてきました。京都議定書で約束した90年比6%減に対し、2012年は6・3%も増加しました。
今回の基本計画案も、石炭火力を原発と同列の「重要なベースロード電源」と位置づけています。温室効果ガスを減らすために原発が必要だという政府の主張は、地球温暖化を心配する国民感情を悪用したものです。
原発依存度を低下させながら再生可能エネルギーを拡大したドイツでは、温室効果ガスを90年比で20%以上削減しています。原発と再生可能エネルギーのどちらを、21世紀のエネルギーとして選ぶべきかは、はっきりしています。
(つづく)
(しんぶん赤旗2014年3月15日付けより転載)