安倍首相は「世界一安全な原発技術を提供できる」といって、原発メーカーなどと連れ立って、原発輸出の「トップセールス」で世界中を奔走しています。自国で重大な事故を起こし、事故の収束も程遠いのに、「世界一安全な原発」と売り込むことほど罪深いことはありません。この無謀な道に対する各党の態度が問われています。
自民党は総選挙の公約に「インフラ関連産業の国際展開を強力に支援し、政府のトップセールス等を駆使して受注競争を勝ち抜きます」と明記し、トップセールスを売り物にしています。
日本共産党は「無責任な原発輸出政策をただちに中止すべきです」ときっぱり訴えています。
他の党はどうでしょう。ベトナムに働きかけて原発の海外進出が実現できたと自慢したのは民主党政権で、東電福島第1原発事後も原発輸出交渉の継続を決め、原発を売り込むことに積極的でした。
今年の国会では、安倍首相が昨年結んだトルコやアラブ首長国連邦との原子力協定が、自民、公明、民主の賛成多数で承認されました。福島原発事故後に承認された協定は初めてです。
協定は、両国の原発建設計画に日本企業が参入し、原子炉などを輸出するための法的枠組みを定めるもので、NGOや市民団体から「無謀な原発輸出を促すものだ」と批判されてきたものです。
日本共産党は「事故を起こした日本が率先して原発を売り込むのは無責任そのもので、『安全神話』の輸出だ」と反対しました。
11月には、原発輸出を推進する「原子力損害の補完的な補償に関する条約」(CSC条約)が、自民、公明、民主、維新の党などの賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
同条約は、原発事故の損害賠償責任を原発メーカーに及ばないようにすることで訴訟リスクを負わずに原発輸出ができるなど数々の問題点があります。日本弁護士連合会も同条約について「原子力被害者の保護に欠けることになる」と意見書を出しています。
“将来への重荷”他国に輸出
原発輸出に警鐘をならす「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝さん
安倍首相は“原発輸出外交”に積極的です。
その一つ、トルコには三菱重工業と仏アレバ社が共同開発した原発を4基建設する予定です。世界有数の地震国で、地元の反対も根強くあります。インドへの輸出には核拡散のおそれもあります。
何よりも、廃棄物は処分方法が決まらず、将来世代につけを負わせるものです。そんな“重荷”を他国に輸出するのが「原発輸出」です。安全性・経済性・核廃棄物処分・地元の反対などさまざまな問題がある「原発輸出」をすべきでないと考えます。今度の選挙の大事な争点です。
(「しんぶん赤旗」2014年12月10日より転載)