原子力規制委員会は5月15日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開準備の中止指示を命令することを決めました。原子力機構が目指すとしてきた今年度内の運転再開は不可能な状況となりました。また規制委の専門家チームは同日、日本原子力発電の敦賀原発(福井県敦賀市)2号機直下を通る破砕帯(断層)を活断層と断定する評価書をまとめました。同機は廃炉が濃厚となりました。
もんじゅは昨年(2012年)11月、機器約1万件について点検期間の超過が発覚。規制委の立ち入り検査などの結果、点検業務が担当者任せになっていて、現場で不適切な処理による点検の先送りが繰り返されていたことなどが判明しました。
規制委は原子力機構の組織的要因として、経営層、幹部が「安全を最優先とする方針を明確に示していない」、「点検よりも試験工程を優先する考えを有している」と分析。これまでの規制委の指示に対する対応が不十分であり、「安全文化の劣化が認められ」、「法令違反状態は是正されていない」と指摘しました。
規制委は、原子力機構に対象となる機器の点検状況を管理できるシステムの構築などを指示。対応を報告させるとともに、規制委で確認するまでの間、運転再開に向けた活動は行わないよう命じるとしています。
規制委の田中俊一委員長は、「何度も繰り返されており、事態はかなり深刻だ」と述べました。命令に先立ち原子力機構には、文書による弁明の機会が与えられます。
廃炉 濃厚に
敦賀原発の敷地内には多数の破砕帯があり、1、2号機の原子炉建屋直下も走っています。問題になっているのは2号機原子炉直下を走る「D―1」破砕帯です。専門家チームは、調査のために掘削された大規模なD―1トレンチ(溝)を中心に、同破砕帯の活動時期や浦底断層との関係を調査し、評価しました。
評価書は、トレンチで新たに見つかったK断層について、近年活動していないとする日本原電の主張を「信頼性がかなり低い」「判断できるデータが提示されていない」と指摘。K断層は現行の指針で活断層とみなす後期更新世(12万~13万年前)以降に活動した可能性が否定できず、「活断層である」と評価しました。
さらにK断層などはD―1破砕帯の延長に近いなど、「一連の構造である可能性が高い」としています。
以上から評価書は、2号機原子炉直下を走るD―1破砕帯は「耐震設計上考慮する活断層である」と結論づけ、「至近距離にある浦底断層と同時に活動し、直上の重要な施設に影響を与える恐れがある」としました。規制委の島崎邦彦委員長代理は、同原発は「安全上、低い状態だった」と述べました。
一方、1号機原子炉直下を走る破砕帯については、日本原電の調査結果を踏まえて検討するとしています。
敷地内の破砕帯を調査あるいは調査予定の6カ所の原発で評価書がまとまったのは初めてです。評価書は来週にも規制委に提出され、審議されます。