放射性物質を環境中に漏出させた日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同運営する大強度陽子加速器実験施設「J−PARC」(茨城県東海村)の問題で、原子力規制委員会は5月29日、同じような漏えいを起こす可能性のある施設を選び出して必要な点検、調査を行うよう規制庁に指示しました。
J−PARCは23日午前11時55分ごろ、実験中に陽子ビームが想定を超えた短時間に集中し、標的の金に照射されました。このため標的の一部が蒸発し、ビームによって生成された放射性物質が施設内を汚染したと考えられています。
この際、施設内の放射線量を下げるために排気ファンを運転したため、放射性物質が施設の外に放出されました。時施設内にいた55人中33人に内部被ばくが確認されています。
規制庁は、J−PARCを運営する原子力機構と高エネ研の聴取結果などから、実験機器の誤作動時に放射性物質の漏出を想定しない設計だったと報告。事故当時の汚染範囲や内部被ばくに関して、判断がどのように行われたのかなどを確認すると説明しました。
規制委の中村佳代子委員は、施設内の汚染を確認しながら排気ファンを運転させたことなどに対し、「放射性物質を扱っている専門家のモラルの欠如と言わざるを得ない」と指摘。田中俊一委員長は、J−PARCの陽子線が高エネルギーでかつ極めて強度の強いビームを生じる点を指摘し、「考え方のうえで従来の加速機のレベルと同じような考え方があったのではないか。許可する側にも問題があったのではないか」と指摘しました。