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「もんじゅ判決」批判の根拠示せ・・党地区委と敦賀市議団・・国に説明を求める(中)

7月25日、党嶺南地区委員会と敦賀市議員団が、国に「もんじゅ判決」批判の根拠を示すよう求め、要請した内容「赤旗読者ニュース」(上)の続きを紹介します。

3、蒸気発生伝熱管破損事故と炉心崩壊について

raputya 国は、蒸気発生器伝熱管の「高温ラプチャ型破損(注2)は、蒸気発生器内の圧力変化を検出する装置や防止装置が複数備えられており、適切に予防され、破損可能性はないからその考慮は不要。」、「(高裁)判決では、高温ラブチャが発生するとした上に様々な事象を想定して炉心崩壊の恐れがあるとしているが、このように起こりそうもない事態をいくつも重ねる想定が必要であるとする考え方は非現実的。」(7月16日、渡辺格課長)といいます。

しかし、もしもの場合、蒸気発生器での高温ラプチャ型破損の発生が避けられないことは、ドイツやフランスの例でも、旧動燃自身がおこなった実験によっても明らかです。

また、高温ラプチャによる蒸気発生器の大量破断は、その系統の冷却機能の喪失をもたらすだけでなく、水ナトリウム反応で生ずる高い衝撃的な圧力によって、一次系と二次系の境界をなしている中間熱交換器を破壊してしまう可能性があります。

さらに、「非現実的」「高温ラプチャは起こることはない」とは、旧動燃の主張であり、その後、福井地裁判決が判示した「動燃の1998年6月提出の報告書(乙イ43、44)によって、『これら最新の知見に基づいて本件原子炉施設の加熱器及び蒸発器について再評価をした結果、いずれもすべての運転条件において高温ラプチャ型破損が発生する条件とはならない旨の結論を得た。」との内容は、安全審査された上での国の判断ではありません。

●国→水とナトリウムの反応を検知して水と蒸気を排出(ブロー)するシステムがあり、高温ラプチャは起こらない

●高裁判決→ナトリウム中への水の漏れ方により検出が遅れ、可能性を否定できない

国は、「もんじゅ」には水とナトリウムの反応を検知して水と蒸気を排出するシステムがあり、高温ラプチャが起こることはない」と主張します。

monjyuzentaiしかし、「ナトリウム中水素計(水とナトリウムの反応を検知する計器)が設置されているとはいっても、これによっては水漏えいを検知するまでに相当の時間を必要とすることが認められる。」(原判決)しかも、「破損伝播開始時間と比べてみると、水漏えい率が毎秒0・1グラムを少し上回る程度から毎秒1000グラム(1キログラム)までの範囲では、‥(水漏えいを検知する前に伝熱管の伝播破損が始まること)が認められる。ちなみに、高温ラプチャ型破損は、ウェステージ型破損よりも一般的に破損伝播に至る時間が短いとされている。」(同)。

よって、ナトリウム中への水の微少漏えい(毎秒0・1グラム以下)が、短時間に小・中規模漏えい(毎秒0・1~2キログラム)に拡大した場合には、「ナトリウム中水素計の水漏えいの検出が遅れ、伝熱管破損の伝播(拡大)に繋がる可能性を否定することはできない。」(同)。と指摘しています。

●国→カバーガス圧力計と圧力開放板開放検出器によって早期に検知するので、高温ラプチャは起こらない

●高裁判決→圧力上昇の検出が遅い圧力開放板開放検出器では高温ラプチャは防止できない。カバーガス圧力計でも、発生までの時間的余裕が少なく万全とはいえない

また国は、「小規模以外の水漏えいについては、圧力上昇を検出するカバーバス圧力計と圧力開放板開放検出器によって、これを早期に検知し、水と蒸気を急速に排出(ブロー)」と主張します。

しかし、「原子力安全・保安院は、平成13年12月11日、本件申請者(核燃)に対し、本件申請者が本件ナトリウム漏えい事故の発生を受けて行った安全性総点検における伝熱管破損に伴う高温ラプチャの可能性についての検討結果(原子力安全・保安院の指示により、伝熱管の肉厚を3・5ミリメートルとするとともに、膜沸騰(注3)を考慮して再解析したもの)によれば、カバーガス圧力計での初期水リーク(漏れ)の検出による場合は、高温ラプチャが発生する判断基準を下まわる結果となっているものの、圧力開放板検出器での検出による場合、高温ラプチャが発生する判断基準を上まわる結果と評価されたとして、本件変更許可申請書の補正を指導し、本件申請者もこれに従っているところである。」(原判決)と指摘しています。 よって、圧力上昇の検出が遅い圧力開放板開放検出器を基準とすれば、高温ラプチャの発生を防止できないということであり、「高温ラプチャは起こらない」との国の主張には根拠がありません。

さらに国は、「原子力安全・保安院は、カバーガス圧力計を基準にすれば、高温ラプチャの発生前に水漏えいを検出できる」といいます。  しかし、この場合でも、高温ラプチャ発生基準である累積損傷和(この数値が1を超えると、解析上高温ラプチャが生じると判断される。)は、運転状態によって0・95、0・97などであり、余裕は極めて少なく、「限りなく1に近いことが明らかである。」(同)。よって、「カバーガス圧力計でも、高温ラプチャ発生までの時間的余裕は非常に小さいものであることからすると、水漏えい検知システムとして万全とは到底認め難い。」(同)と指摘しています。

次に、高温ラプチャ発生を抑制する「水と蒸気を排出するシステム(急速ブロー系)」につて原判決は、イギリスPFR事故の実態を示し、「イギリスの専門家は、PFR事故の際に、ファーストダンプ系(急速ブロー系)が設置されていたとしたら、事故が早期に終息したことは肯認しているものの、リーク(漏れ)量が大きい場合にはその効果にそれほど期待していないことが認められ、急速ブローの有無が伝熱管の高温ラプチャ型破損発生防止の決定的要因となりうるかについては、専門家の間でも意見の分かれていることがうかがわれる。」と指摘しています。

よって、「高温ラプチャ防止対策の観点から見た本件原子炉施設の設備は、水漏えい検出設備の検出速度とその精度は必ずしも万全とは言い難く、急速ブロー系設備にも高温ラプチャ防止の絶対的効果を期待することができないことが明らかである。そうだとすれば、・・・伝熱管の高温ラプチャ型破損の発生の可能性を否定することはできない。」と指摘しています。

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