「住人で集まっていても、災害公営住宅に入居することも心配の種という人が結構いるよ。公営住宅の敷金、引っ越し代、こたつやカーテンも買わなきゃなんない。消費税や物価もあがっていくというし、弱ったなあと」
こう話すのは宮城県多賀城市の高橋公園仮設住宅で暮らす男性(66)です。
宮城県内の仮設住宅で暮らす被災者からは、仮設退去後の経済負担を心配する声があがっています。
宮城県は、仮設住宅にあるカーテンや照明、こたつなどの暖房器具、ガス台、エアコンなどの取り扱いを決めていません。そのため、岩沼市などでは引っ越しの際、被災者が持ち出さないように注意する「退去確認書」が配られています。
日本共産党の渡辺ふさ子岩沼市議は「収入の少ない被災者からは、『引っ越したら、またカーテンや暖房器具を買わないといけないのか』と、困惑が広がっています。再利用の当てもなく保管するのであれば、希望者に譲渡すべきです」といいます。
さらに宮城県では、災害公営住宅の入居者への敷金の徴収も問題になっています。
11市町中7市町
本紙が、災害公営住宅の建設を300戸以上予定する宮城県内11市町に問い合わせたところ、7市町が入居の際、敷金を徴収するとしています(表参照)。これらの自治体では、敷金を、家賃などの未払いが起きた際の担保としています。
隣の岩手県が、県営の災害公営住宅での敷金免除を表明したのに比べ、住宅建設を市町まかせにした宮城県。敷金への対応が自治体で分かれました。
敷金の全額免除を決めた自治体は、「被災者の早期の生活再建のためにも免除が必要」(石巻市担当者)、「引っ越しに、さまざまな出費が伴うので、入居者の経済負担を抑えたい」(同、名取市)としています。
免除の援助必須
東日本大震災で家や財産を失った被災者が住む災害公営住宅で、なぜ敷金が必要なのか―。
もともと災害公営住宅は、公営住宅法にもとづいています。災害公営住宅については、通常の公営住宅と違い入居に所得制限がないなど、特例もあります。
しかし「事業主体(県や市、町)は、3月分の家賃に相当する金額の範囲内において敷金を徴収することができる」(同18条)となっており、災害公営住宅にも、この条文が適用されています。
減免をしていない自治体からも「住民から『減免してほしい』という声は複数きている」(南三陸町)と、悩む声が聞かれます。
この問題を議会で取り上げた日本共産党の佐藤恵子多賀城市議は「被災者の経済状態を直視すれば、自立支援のための敷金免除などの援助はかかせません。国や県にも市町村への指導を求めていきたい」と語ります。
(おわり)
(この連載は、菅野尚夫、細川豊史、本田祐典、矢野昌弘が担当しました)