関西電力大飯原発(福井県おおい町)敷地内の破砕帯(断層)が活断層かをめぐる問題で、原発問題住民運動県連絡会は9月17日、原子力規制委員会に申し入れました。佐藤正雄(共産党県議)、河内猛両代表委員や林広員事務局長ら7人が敦賀市の敦賀原子力防災センターにある敦賀原子力規制事務所を訪れ、申し入れ書を手渡しました。
大飯原発では、重要施設の直下を走る破砕帯が活断層である可能性が指摘され、規制委の専門家チームによる調査が行われてきました。2日、規制委の島崎邦彦委員長代理は活動性を否定する「方向性が出た」として、報告書案の作成に入ることを決めました。
申し入れ書は、報告書案づくりをごり押しせず、関電任せの実態を改めて自らの責任で調査を行うことや、大飯原発の再稼働に向けた安全審査を開始する方針の撤回を求めました。
申し入れでは、問題について、関電が従来説明してきた位置や連続性の不確かさが露呈し、現在も不明なままであると強調。専門家の中には、敷地北側の台場浜付近トレンチ(試掘溝)や1、2号機背後の山頂トレンチで確認されている破砕帯を活断層の可能性があるとして、連続性の不明確さも問題視する委員がいることをのべました。
また、立石雅昭・新潟大学名誉教授らのグループが最近、台場浜海岸にみられる破砕帯を現地調査し、海岸東部に活断層の可能性が高い断層を今回発見し、海岸中央部にみられる「地滑り」面も科学的データが不十分としてまとめた意見書をあわせて提出しました。
応対した小山田巧・地域原子力規制統括管理官は「ご意見は本庁に伝えます」「いろんな専門家の意見を聞きながら最終的に報告書はまとまっていく」と答えました。
申し入れ全文は、以下のとおり
2013年9月17日
原子力規制委員会 委員長 田中 俊一 殿
原発問題住民運動福井県連絡会
代表委員 奥出春行・河内 猛
多田初江・佐藤正雄
大飯原発の「安全審査」開始を撤回し、規制委員会の責任で活断層調査を行うよう求める申し入れ
貴委員会は9月2日、大飯発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合第6回評価会合を開催した。
そこで、関西電力株式会社(以下、関電という)が「F−6」と呼び、3、4号機の「非常用取水路」の下を通るとされる破砕帯(断層)について、島崎邦彦委員長代理は「破砕帯(断層)の評価に関して認識の共有化が図れたと私は思っておりますので、一定の方向性が出た」と述べ、次回以降の会合で、規制委に提出する報告書案を提案することを強引に決めた。マスコミはこれを「大飯原発『活断層ではない』規制調査団の認識一致」と報道。貴委員会は5日の定例会で、保留していた「安全審査」を再開することを決めた。
しかし専門家は、「敷地南側」(南トレンチ)の破砕帯は、断層の活動性がないことで一致したが、さらにその西側に破砕帯がある可能性も指摘した。「山頂付近」(山頂トレンチ)の破砕帯については複数の委員から「これだけをもって、動いていないというのはどうか」「将来活動する可能性がある断層等ではないのか」という意見が述べられるなど、「認識一致」は得られていない。また、両破砕帯がどのようにしてF−6とつながるのかの共通認識も得られておらず、これらをF−6とつながる断層の一部だと主張する関電の考えには、「関電さんがF−6というのは、無いのではないか。無理やりボーリングでつなげている」など疑問の声が多く出された。F−6との連続性がはっきりしないのに、「F−6は活断層ではない」との根拠にはならない。
さらに、私たちグループが8月18日に行った調査結果では、台場浜海岸東部で頁岩と超苦鉄質岩類の境界部の、断層の上方延長は比較的新しい時期の活断層である可能性が高い。また、関電が「地すべり」と主張する同海岸西部の「岩盤表層地すべりブロック」は、「地すべり」と断定するにはデータ不足であり検討も不十分で、「地すべり」とは断定できない。
よって、強引に「報告書案」作成を急がないこと。そして、関電まかせにせず、大飯原発敷地内とその周辺の破砕帯(断層)などについて、貴委員会が地質学、地形学、第四紀学的なきちんとした調査を、堆積地質学者などの専門家を加えて行い判断すべきである。
(以上)