きょうの潮流

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働へ国が新潟県知事に要請するなどしています。東電も今月、原子炉に核燃料を搬入する計画を申請しました。こうした動きは被災者にどう映るのか。ちょうど映画「津島―福島は語る・第二章―」(土井敏邦監督)を見ました。津島は福島県の東部、阿武隈山系の山々に囲まれ、震災前は約1400人が暮らす平穏な山村でした▼しかし、2011年3月の東電福島第1原発事故で大量の放射性物質が降り注ぎ、高濃度の放射能に汚染されました。避難指示が全住民に出され、県内外に避難。今も、ほとんどが自由に立ち入りできない帰還困難区域です▼ふるさとをきれいにして返せと住民の約半数が、東電と国を相手に提訴し、高裁でたたかっています。映画は原告らのふるさとへの思い、それが事故で断ち切られたことへの叫びです▼放射能測定を続け、その結果を毎月、散り散りになった出身者に季節の便りを添えて送り続ける人も。出身者を訪ねると「いつ戻れるかな」と聞かれ、返事に困ったといいます▼高齢の両親を避難後に亡くした息子は、避難指示に「家に残る」と頑(かたく)なな高齢の父に“必ず戻って生活させるから”とうそをついて連れ出したと。「いつ戻れるか」と聞く母にもうそをつき通したと後悔の念に声を詰まらせます▼事故で「人生を奪われた」と語る住民は“ふるさとは生きる根源。返してくれとは当然の叫びではないか”と。再稼働に前のめりの国と東電。まるで事故の被害がなかったかのよう。

(「しんぶん赤旗」2024年4月4日より転載)