東京電力福島第1原発の廃炉作業などを支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は8日、溶け落ちた核燃料(デブリ)の本格的な取り出しについて、空気中で取り出す「気中工法」と充填(じゅうてん)剤を流し込んで固める「充填固化工法」を組み合わせて、具体的な手法の検討を始めるよう提言する報告書を公表しました。
報告書では、3号機のデブリ取り出しについて、2工法のほかに原子炉建屋全体を水に満たして取り出す「冠水工法」を加えた3案を評価しました。
デブリを空気中に露出させてロボットなどで取り出す気中工法については、原子炉内部の状態を大きく変えずに実施できる点などを評価。ただ、高線量な炉内でも動く遠隔操作ロボットを開発する必要があるため、放射線の遮蔽(しゃへい)効果がある充填剤で固める固化工法を組み合わせて、「気中工法の課題を一定程度改善し得ることが期待できる」としました。充填剤の素材などは、今後の研究開発で確立するとしました。
冠水工法は、大量の水を閉じ込める構造物の建設に時間がかかる点などが課題だと指摘。一方、水により放射線を遮ることができる「利点は大きい」として、水を活用した工法について引き続き検討するとしました。
福島原発1~3号機には、事故時に起きた炉心溶融(メルトダウン)の影響で、核燃料と炉内の構造物が溶けて混ざったデブリが880トン存在するとみられています。東電は報告書に基づき具体的な検討を始め、2030年代から本格的にデブリを取り出す計画です。
(時事)
(「しんぶん赤旗」2024年3月10日より転載)