原子力規制委員会は1日、運転開始から40年が迫る九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の60年までの運転期間延長を認可しました。規制委による原発の40年を超える運転の認可は5、6基目になります。
川内原発1号機は2024年7月、2号機は25年11月に運転開始から40年。認可を受けて1号機は2044年7月まで、2号機は45年11月までの運転が可能となります。
九電は、20年から特別な点検を実施し、22年10月に川内原発1、2号機の運転延長を申請していました。
原発の運転期間をめぐっては、東京電力福島第1原発事故の教訓から、設備や機器の劣化による「安全上のリスクを低減する」ため「原則40年、最長60年」ルールが導入されました。延長は「例外」とされていました。しかし、今年5月、原発回帰の大転換をねらう原発推進等5法の成立で、規制委の審査などによる停止期間を算入しないことで実質的に60年超運転が可能となりました。
この制度変更で、1号機は新制度施行の25年6月6日までに、2号機は運転開始から40年を超える日までに、新制度に基づいた審査を受けて運転期間延長の認可を受ける必要があります。
これまで40年超の運転延長を認可されたのは、関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)と美浜原発3号機(同県美浜町)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の4基です。
解説 川内原発の運転延長認可
危険で不安定 動かすな
九州電力川内原発1、2号機は原子力規制委員会が40年超運転を認可した原発としては5、6基目になります。規制委はこれまで事業者が運転期間延長を申請した原発は、全て認可しています。
岸田政権は今年5月、原発回帰・優遇姿勢を鮮明にして、これまで最長だった60年を超える運転を容認する原子炉等規制法などの改悪を成立させました。
老朽化した原発は、機器や建屋の劣化に加え、設計の古さなどの安全上の問題があります。また、維持にコストがかかり、メンテナンス等で稼働率が低下します。米国では長期の運転許可を受けた原発でも経営的判断から老朽原発の停止・廃炉が相次いでいます。
川内原発は、福島第1原発事故後、最初に規制委の許可を受け2015年に運転を再開しました。この際の基準地震動が比較的低く、このため規制委が21年に未知の震源による基準地震動に関する新たな評価方法を導入したことに伴い、基準地震動が増加する見込みです。これまでに示されている評価では、鉛直方向が約1・4倍、水平方向が約1・1倍になる見込みです。今回の延長認可には基準地震動の新たな評価は取り込まれていないため、再度劣化を踏まえた耐震評価を実施する必要があります。
九電管内では玄海原発3、4号機も再稼働しており、最大で4基の原発が稼働。このため、九電は太陽光発電など再エネの出力を抑える出力制御を頻繁に実施しています。出力制御は、再エネ拡大の重大な足かせとなっています。危険で不安定な老朽原発を動かし、再エネを抑制することは、未来に対する誤った選択です。
(「原発」取材班)
(「しんぶん赤旗」2023年11月2日より転載)