【ベルリン=桑野白馬】ドイツで15日、国内で最後まで稼働していた3基の原発が停止し、国内すべての原発の稼働が停止します。1961年に旧西ドイツで商業用原発が初めて稼働し、ピーク時には全発電量の35%以上を占めていたドイツの原子力発電が62年間の歴史を終えました。今後、核燃料の冷却や廃炉作業、核廃棄物の安全な処理など長期にわたる課題に取り組んでいくことになります。
ドイツは2002年、社民党と緑の党の連立政権の下で、21年までの原発の全基段階的停止を法制化。中道右派のメルケル政権は原発の運転期間をいったん延長したものの11年に発生した福島第1原発事故を受け、22年までの脱原発に踏み切りました。ロシアのウクライナ侵略によるエネルギー危機への対応として、政府は昨年11月、年末に閉鎖を予定していた最後の原発3基について4月15日までの稼働延長を決めましたが、再延長はせず脱原発が完了しました。
レムケ環境相(緑の党)は3月末の記者会見で、「原子力は高リスク技術であり、ドイツのような国でも原子力は制御できない」と断言。さらに「原発は戦争における標的になる」「戦争状態においてまで防護対策のとられている原発は世界のどこにもない」として、「ドイツ政府が脱原発の決断をしたことは正しかった」と述べました。
ドイツの脱原発を後押ししたのは、1970年代から続けられてきた反核・反原発運動でした。レムケ氏は「祖国のために反原発運動をたたかってきた多くの活動家たちに感謝したい」と表明しました。
欧州では、オーストリアやイタリアが国民投票を通じて脱原発を決定。スイスも国民投票で50年までの脱原発を決定しています。スペインは35年までの全原発停止を決めています。
他方で、脱炭素の推進やロシアへのエネルギー依存脱却のために原発への回帰や原発新設を進める国もあり、対応は割れています。
(「しんぶん赤旗」2023年4月16日より転載)