東京電力は10月21日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水貯留タンク群のうち、降雨の影響で、タンク群を囲む堰(せき)にたまった水があふれたのは計11カ所だったと発表しました。堰外へ排出する際の暫定放出基準を超えるストロンチウム90が検出されたのは6カ所で、最高値は1リットル当たり710ベクレル。
この6カ所にたまった水はタンクや地下貯水槽に移送するなどしているほか、基準値未満だった水は堰の排水弁を開くなどして堰外へ放出しました。放出量は現在のところわかっていません。
後で分析 手順守らず
東京電力は、台風18号の大量の降雨でタンク周りの堰から水があふれた事故をふまえ、降雨などで堰に水がたまった場合は、一度すべて仮設タンクに回収した後、水に含まれる放射性物質の濃度を分析して放出するかどうかを判断すると決めていました。
しかし今回、堰にたまった水を仮設タンクに回収せず、あふれた後に分析しています。あふれてから雨水によって薄められていた可能性があり、実際に流出した水は分析結果より高濃度だった可能性もあります。暫定基準を下回ったとされる5カ所も、あふれた後の分析であり、対応が遅いといわざるを得ません。
まず堰内の水を仮設タンクに回収するという自ら決めた手順を守らず、法令基準(1リットル当たり30ベクレル)も上回る濃度のストロンチウム90が含まれる水を堰外にあふれさせました。堰からあふれた水は排水溝を通じて海へ流れ出る危険があります。
同原発では、タンクからの汚染水漏れや、タンク群周りの堰からの流水などの事故が相次いでいます。今回の事故でも、放射性物質を外部へ放出させないための東電の姿勢が問われます。(神田康子)
暫定放出基準 セシウム134が1リットル当たり15ベクレル未満、セシウム137が同25ベクレル未満、ストロンチウム90が同10ベクレル未満などを堰外への放出の条件としています。