日本共産党の笠井亮議員は10月22日の衆院予算委員会で、「国家的な非常事態」(佐藤雄平福島県知事)にたちいたった放射能汚染水問題を取り上げ、政府の「東京電力まかせ」の態度を根本から改めるよう迫り、同委員会での汚染水問題に関する集中審議を行うよう要求しました。(詳報)
このなかで笠井氏は、安倍晋三首相が外遊先で汚染水問題について「状況はコントロール(制御)されている」「完全にブロックされている」と断言したことに対して、福島県浪江町議会が「事実に反する」と抗議し、国が全面的に責任を持って解決するよう求めて全会一致で可決した意見書を突きつけました。政府の責任であらゆる英知を結集して汚染水の現状を徹底調査するよう強く求めました。
安倍首相は「ブロックされているのは健康への影響についてだ。影響は完全にブロックされている」と発言を正当化するだけで、「国家的非常事態にある」との認識にすら立っていないことを浮き彫りにしました。
笠井氏は、毎日のように汚染水漏れが起きるなかでも、政府が原子力災害対策本部の会議を9月3日以降一度も開いていない問題を追及。政府や東電が200人増員すると宣伝した福島第1原発の作業員も実際は減っている実態(グラフ)を示し、ずさんな汚染水対策がまかりとおっていることを明らかにしました。
首相は「原子力規制庁長官から東電の広瀬(直己)社長に対し、早急に現場管理が正常におこなわれるよう手当てを求めている」と答え、「東電まかせ」の態度を貫きました。
笠井氏は、原子力規制委員会が原発再稼働審査のために職員を急募していることも示し、「再稼働をやりながら、汚染水問題で国が前面に出ているとはいえない。再稼働をやめ、この問題(の収束)に集中し、原発ゼロを決断すべきだ」と指摘しました。
再稼働やめ汚染水対策に集中を ・・衆院予算委 笠井議員が追及
10月22日の衆院予算委員会で、原発汚染水問題を取り上げた日本共産党の笠井亮議員。「国が前面に立って責任を果たしていく」といいながら、実際には東京電力まかせの安倍晋三首相と、国民の立場にたって打開策を示す日本共産党との対比が鮮明になりました。
首相「安易な放出はしない」
笠井氏「海汚さないと確約を」
笠井氏は、「国が前面に立つ」と表明した安倍首相に対し、原発や将来のエネルギー政策について立場の違いを超えて、英知と総力を結集してこの問題の解決にあたるべきだとした日本共産党の「緊急提言」を提示。「『国が前面に』というなら、それにふさわしい転換、切り替えが必要だ」と指摘しました。
笠井氏は、2011年3月の原発事故直後を大きく超える規模で大量の放射性物質が汚染水として出続けていると強調しました。
笠井 首相は汚染水、放射能で海を汚さない立場で臨むのか。
首相 海への安易な放出は行わない方針だ。
笠井 安易な放出はしないとしか言えないのは海は汚さないと確約できないからではないか。
茂木敏充経産相は「測定し基準値を下回り、汚染水の影響は一定のエリアにとどまっている」と答弁。笠井氏は「濃度が薄くても大量に出続ければ海への蓄積は莫(ばく)大(だい)な量になる。総量が問題だ」と反論し、「汚染水は今後どうなるか分からない。危機的状況、瀬戸際にあるという認識があるのか」と首相の姿勢をただしました。
笠井氏は、安倍首相の「状況は完全にブロックされている」との発言に対し、福島県民から“明らかに事実と違う″と怒りが広がっている事実を突きつけました。
笠井 福島県浪江町議会の意見書(下)は「発言は事実に反する重大な問題がある」「汚染水が防波堤の開口から外海へ流出していることは誰の目にも明らかである」としている。この指摘をどう思うのか。
首相 健康への影響が完全にブロックされている。しっかり説明していく。
笠井氏は、汚染水問題は「国家的な非常事態」とする福島県知事の認識を共有して、放射能汚染水の現状など、「あらゆる立場の専門家の英知を結集して徹底調査して公表すべきだ」と求めました。
笠井「対策本部会議開いたか」
経産相「開けば解決するわけではない」
笠井氏は、9月3日に政府が発表した汚染水問題の基本方針のもと「『東電任せ』にせず、政府が前面に立つ」(安倍首相・原子力災害対策本部長)と表明したその後の政府の対応を追及しました。
笠井 あれから50日たつが、対策本部会議を何回開いたのか。
経産相 9月3日に大きな方針の決定をした。
笠井 (対策本部会議をその後)やったかどうかだ。
経産相 必要な時に開かせていただきたい。
「1回も開いていない」との答弁をあくまでも拒絶する経産相。
首相も「9月3日に大方針を決めたということだ」とはぐらかし、経産相は「会議だけ踊っていれば問題が解決すると思っていない」などと開き直りました。
笠井氏は9月3日以降も、▽タンクから汚染水があふれた▽パイプの継ぎ目から漏れた▽外洋に直接漏れた―など毎日のように深刻な事態が起こっていることを示し、「首相は東電の後ろにいるのではなく、文字どおり『前面』に出て対処すべきだ」と迫りました。
首相「手当て東電に求める」
笠井「首相自身が乗り出せ」
笠井氏は、東電が政府に提出した汚染水漏えいに関する報告書(15日)を示し、福島第1原発の現場管理のずさんさを告発しました。報告書には、▽水の移送作業を1人で実施▽地盤の傾きを知りながら実測もせず、手順書も作らず、水位の確認も不十分―など、必要な要員配置や体制も取られていない実態があげられていました。
笠井氏が報告書の内容を具体的にただすと、広瀬直己・東電社長は「そのように記載されている」と認めました。
笠井氏は、福島第1原発の作業員は、今年2月に下請け作業員だけで1日約4200人いたのに、10月には東電社員とあわせても2400人しかいないなど大幅に減少していることを指摘。東電がコスト削減を優先させ▽資材の品質も落ち、ベテラン作業員は放射線を上限まで浴びる▽不慣れな作業員も残業続き▽下請け作業員の多くは危険手当も支払われない―との現場作業員の証言を示して、こう迫りました。
笠井 東電も認めたこうした現実があるのに、国は何をやっているのか。
首相 原子力規制庁長官から東電の広瀬社長に、早急に現場管理が正常に行われるよう手当てするよう求めている。
総理自身が(前面に)乗り出さなければダメだ。
笠井氏は、汚染水対策もままならないのに、原子力規制委員会は原発再稼働審査のための人員募集まで行っている(広告)と指摘。「再稼働はやめて、汚染水対策に集中すべきだ。原発ゼロの決断を行うべきだ」と強調しました。