原子力規制委員会の東京電力福島第1原発事故で避難した住民の帰還に向けた防護措置などの考え方を検討する検討会合が11月11日開かれ、避難した住民の帰還に向けた取り組みに関する「基本的考え方」の案が示されました。
案は、地域や時期に応じた利用できる対策などを明示したロードマップの策定、地域ごとに住民を支援する相談員の設置、相談員の活動を支援する拠点の整備などを示しています。相談員には自治会の代表や自治体職員、医師、保健師などを想定しています。
避難解除については、政府が示した目安である空間線量率から推定される年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることを前提として、帰還にあたっての被ばく線量については個人の被ばく線量の評価を基本とすべきであるとしています。個人線量計などを用いた個人線量は、空間線量率から推定される被ばく線量と比べて低くなる傾向が指摘されています。
また、生活不安の解消に関して、生活設計を立てるための取り組み、作業員の安全確保や健康管理などの取り組みの必要性を提起しています。
今回の検討会合は4回目。「議論が尽くされていない」などの発言が、出席した外部専門家から出されました。座長の中村佳代子委員も「まったく不十分」「肝心なところまで進んでいない」と認めながら、「とりまとめさせてもらう」と述べ、案に対して出された意見を盛り込んで、近く規制委員会に提出するとしました。
避難者 不信の声・・除染では1ミリシーベルト→帰還では20ミリシーベルト
“現地の話聴いて”の指摘も
何をめざす会議なのか―。原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」の議論を見ての疑問です。9月の第1回会合で、座長の中村佳代子規制委委員は検討チームの趣旨を「避難者が元の場所に戻って生活をする。それを決める一つの情報提供」と説明しました。
テーマは大きくいって二つありました。一つは放射線量の考え方の徹底。もう一つは避難者への支援策です。
放射線量については国際的知見に基づくものとして、年間積算線量20ミリシーベルトを目安として帰還を考えるという一連の考え方を内閣府が提起。会合では「(年20ミリシーベルトの基準を変えると)混乱が起きる」(中村委員)として、線量水準の考え方に関する議論はまともにされませんでした。
避難者への支援策はどうか。内閣府、復興庁、環境省、文部科学省など各省庁担当者がこれまで行ってきた施策を紹介するために時間が費やされました。
そして今回、提示された「基本的考え方」。その核は「年20ミリシーベルト目安の帰還」を進める放射線量に対する考え方の強調です。
「国から除染の時は『年1ミリシーベルトにするから廃棄物の仮置き場を設置させてほしい』と言われた。帰還の段になったら『年1ミリシーベルトは長期目標。20ミリシーベルトが目安』という。話が違う」と、避難者から不信の声が上がっています。
支援策について外部専門家から「福島の実情を知らないので責任を持ってものが言えない」(10月)との発言が複数あり、一部の自治体関係者から急きょ聞き取り。しかし、「もっと現地の声を聴いてもらいたい」と釘を刺す専門家もいました。
「安全・安心」のための会議といいながら、支援策の強化はほとんどなく、緩めの放射線量限度を強調し、逆に除染や支援策、健康管理をあいまいにしかねません。(柴田善太)