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東電刑事裁判 明らかになったこと(中)・・津波対策を先延ばし

図1 2008年2月の「御前会議」資料。福島第1、第2原発の津波高さの想定変更として、赤字で「7.7m以上」、備考欄には「詳細評価によってはさらに大きくなる可能性」とあります(東電株主代表訴訟で証拠として提出されたもの)

 裁判で証拠採用された元東電幹部の供述調書では、勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄の3被告らが出席した2008年2月16日の「中越沖地震対応打ち合わせ」で、従来の想定を超える津波になることや津波対策が必要だとする方針が報告・了承され、同3月11日に「常務会」で津波対策が決定されたとしています。

 「中越沖地震対応打ち合わせ」は、社長だった勝俣被告も出席しているため「御前会議」「社長会議」と呼ばれ、07年7月の新潟県中越沖地震で全7基が停止した柏崎刈羽原発への対応策を協議する場でした。あわせて福島第1、第2原発のバックチェックの問題も検討されました。

 08年2月の御前会議資料には、政府機関の地震予測「長期評価」の見解を取り入れたら、第1原発の想定津波が従来の想定を上回る「7・7m以上」になると明記され(図1)、海面から4メートルの敷地(4メートル盤)にある海水ポンプの対策などが明記されています。

図2 2008年7月の御前会議で配布された、「厳秘」「会議後回収」とされた資料「新潟県中越沖地震発生に伴う影響額の見通しについて」。柏崎刈羽原発が3264億円とあり、福島第1、第2は1941億円で、緑色の字で「(津波対策は除く)」とあります(東電株主代表訴訟で証拠として提出されたもの)

社の方針では

 津波対策が社の方針だったとする元幹部の供述調書に対し、勝俣被告は「勘違いじゃないか」と全面否定。武藤被告も「方針が決まっていたことはない」と述べ、武黒被告も「了承されたといえるものがない」といいました。3被告は御前会議に出席していましたが、会議に出された津波資料さえも「覚えていない」「報告されていない」と述べました。

 しかし、同3月初旬、社内の土木や建築などのグループの担当者による津波対策に関する打ち合わせの「議事メモ」には、「今まで想定していた津波の水位を上回る見込み(約5・5m→約7・7m)である(社長会議にて説明済み)」「津波想定高さが10数mとなる可能性があることについて上層部へ周知することにした」との記載があります。

 ところが、7月31日になり、津波対策を進めようとした担当者らとの打ち合わせで、武藤被告から「研究しよう」と指示し、津波対策は先延ばしになりました。

 この時、土木グループの責任者は指示を受け、太平洋側で原発を持つ日本原子力発電(原電)、東北電力など他社にメールを送り、長期評価を採用しなくなった東電の方針について打ち合わせを呼びかけ、方針の変更を伝えました。

福島が止まれば

 刑事裁判で検察官役の指定弁護士は、メールを受け取った原電の担当者に対し尋問。検察庁の取り調べで、メールを送った責任者が「柏崎も止まっているのに、これで福島が止まったら経営的にどうなのかって話でね」と言っていた、と述べていないかと質問。「そういうふうに思った」と証言しました。

 この武藤被告出席の打ち合わせの直前、7月21日に3被告が出席した「御前会議」がありました。席上、「新潟県中越沖地震発生に伴う影響額の見通しについて」の資料が配られました。表紙には「厳秘」「会議後回収」となっています。ここには、福島第1、第2の対策費用も1941億円と想定。しかし、「概算想定(津波対策を除く)」と明記されています。(図2)

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」年9月18日より転載)