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全道停電の教訓・・「大規模集中」からの転換こそ

 北海道胆振地方を震源とする地震で、離島を除く全域で295万戸が停電する「ブラックアウト」が発生してから、きょうで2カ月です。全国初のブラックアウトは道民の生活と営業に大きな被害を及ぼし、農業をはじめ損害は甚大です。国や電力関係団体は北海道電力の対応について検証を行っていますが、根本的な原因には踏み込みきれていません。電力需要の半分近くを苫東厚真石炭火力発電所で賄ういびつな電力供給体制が、なぜ是正されなかったのか。背景の大本に迫らなければ真の再発防止につながりません。

いびつな「供給」体制

 北海道のブラックアウトを検証している国の認可法人・電力広域的運営推進機関の検証委員会が、先月末にまとめた中間報告は、大規模停電は震源に近い苫東厚真発電所が止まったほか、送電線の故障など「複合要因」で起きたとしました。苫東厚真火力だけで需要の半分近くを賄ってきた問題については「不適切とは言えない」との見解を示しました。経済産業省の委員会もこの報告をほぼ追認しました。これを受けて、北電が発表した再発防止策も万全とはとてもいえず、道民・国民が納得できる検証結果とは言えません。

 なにより問われなければならないのは、苫東厚真発電所(3基で出力165万キロワット)に過度に依存した「集中型」電源のゆがんだ電力供給の実態です。北電はこれまで苫東厚真火力と泊原発(3基で出力207万キロワット)の二つの大規模な発電所に頼る体制をとってきました。

 ところが、泊原発は2011年の東京電力福島第1原発事故の翌年から停止しており、事実上、苫東厚真に「一極集中」する状況になっていました。北電は「二極体制」にしようとしましたが、泊原発は敷地内にある断層の問題や埋め立て地の液状化対策を迫られ、動かす見通しがたちません。

 それにもかかわらず北電は泊原発再稼働にこだわり、この5年で発電所への投資額の5割以上に当たる1887億円を、「安全対策」として停止中の原発に投じました。そのために他の発電所の建設・建て替えなどが遅れたという指摘もあります。北海道と本州で電力を融通する北本連系線の強化策も後手に回りました。

 北電や経産省の内部では、苫東厚真火力で重大なトラブルがあれば電力供給がきびしくなると予想し、対策を求める意見もありました。安定供給体制の整備よりも泊原発再稼働を優先してきた責任は重大です。泊原発が稼働していたとしても、強い地震が起きれば停止します。供給の多くを原発に依存している限り、全域停電が起こる危険性は高いままです。泊原発に固執する北電と政府の姿勢こそ検証の中で問う必要があります。

再生エネを生かす道で

 原発や石炭火力発電に依存することの弊害は明らかです。大規模集中型から地域分散型の電源システムへの転換こそ重要です。

 分散型電源の主力は、再生可能エネルギーです。北海道は太陽光、風力、地熱、家畜や森林由来のバイオマス(生物由来資源)による再生エネが盛んです。太陽光と風力だけでも160万キロワットの発電容量があります。再生エネをそれぞれの地域で生かす「地産地消」の道こそ真剣に探るべきです。

(「しんぶん赤旗」2018年11月6日より転載)