福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の海水や地下水から検出した放射性物質ストロンチウム90の濃度について、東京電力が測定値を得ているにもかかわらず、別の測定結果と矛盾するため「分析中」として半年以上も公表していないことがわかりました。
東電が1月8日の会見で以前に出されていた質問への回答として明らかにしました。
「分析中」として未公表なのは、昨年(2013年)6月以降に港・湾内の海水や地下水から採取した約140件。東電によると、一部のデータで、全ベータ(ベータ線を放出する放射性物質)を上回る値が測定されました。全ベータにはストロンチウム90も含まれるため、本来なら上回ることはありません。
東電は、この逆転現象について要因調査を進めて是正したうえで結果を公表するとしています。公表の遅れについては、測定対象が増えたため「なかなかストロンチウムに手がかかれなかった状況」と説明しています。
一方、本紙の取材に対して東電は、ストロンチウム90と全ベータの逆転現象の原因として、ストロンチウム90の測定値が間違っている可能性が大きいとしつつも、全ベータの測定値が間違っている可能性も認めました。両方のデータを公表したうえで原因調査中とするのが本来あるべき対応ですが、両方を公表しない理由について東電から明確な回答はありませんでした。
クレーン不具合 汚染水処理中断・・福島第1
東京電力は1月8日、福島第1原発で汚染水から放射性物質を減らす装置「ALPS(アルプス)」の処理作業ができない状態になったと発表しました。放射性物質を吸着させた廃棄物の保管容器を交換するクレーンに不具合があり、再開の見通しは立っていないといいます。
アルプスは3系統あり、トリチウム(3重水素)以外の放射性物質を大幅に減らすことができるとして、政府や東電が汚染水対策の中核と位置付けて本格稼働を急いでいますが、液漏れなどのトラブルが続いています。