韓国のソウル行政裁判所は2月7日、設計寿命を超えた月城原子力発電所1号機(同国南東部・慶尚北道慶州市)の運転延長許可を取り消すよう命じる判決を出しました。弁護士団体や環境運動団体は相次いで歓迎声明を発表。「歴史的な判決」と評価しています。
(面川誠)
慶尚北道・慶州市にある月城原発の1号機は1983年に営業運転を開始し、2012年11月に30年間の設計寿命を迎え稼働を停止しました。
事業主の韓国水力原子力発電は10年間の運転延長を申請し、首相直属機関の原子力安全委員会が15年2月に延長を許可。これに対して2000人以上の周辺住民が、処分の取り消しを求めて提訴していました。
判決は延長許可について、①必要な書類がそろっていない②安全性に関する最新の技術基準を適用していない③原子力安全委員のうち2人が決定以前の3年以内に原発関連事業に関与していた―と指摘。原子力安全法と原子力安全委員会設置法に違反するとして、許可決定の取り消しを命じました。
国民の安全優先
訴訟を支援してきた市民団体の環境運動連合は声明を発表し、「法の正義が生きていることを示したものであり、原発の安全と国民の安全に対する願いが裁判所に伝わった」と歓迎しました。
民主社会をめざす弁護土会も声明で、「世界の脱原発の流れを反映したものであり、国民の安全を優先した歴史的な判決」と評価。
「朴僅恵(パク・クネ)政府による運転延長許可は、世界の流れに反する常識外れの措置たった」と政府を強く批判しました。
控訴する意向も
原子力安全委員会は控訴する意向です。
月城原発では09年に放射能漏れで労働者が被ばくするなど、事故が多発しています。試験結果を偽装したケーブルが制御拝を動かすシステムに使用されていたことが発覚するなど、ずさんな安全管理が問題視されてきました。
15年2月の原子力安全委員会による運転延長の許可は、安全性の検討が不十分だとして2人の委員が退場するという異例の事態の中で強行されました。
慶州市付近では昨年9月、朝鮮半島で過去最大規模とされるマグニチュード(M)5・8を記録する地震が発生し、月城原発が緊急停止。耐震性への不安も高まっています。
(「しんぶん」赤旗2017年2月9日より転載)