政府は膨大になる原発の廃炉や賠償費用の一部を「託送料金」に上乗せし、新たに国民から徴収する方針です。昨年末、この問題を検討してきた経済産業省の有識者会議が「中間とりまとめ」を行いました。国民の意見募集(パブリックコメント)は1月17日が締め切り。昨年5月、安倍晋三首相は「託送料金」について内閣府の消費者委員会に諮問し、7月に、同委員会の専門調査会が「電力託送料金に関する調査会報告書」をまとめています。調査会委員のひとり、矢野洋子さん(前東京消費者団体連絡センター事務局長)に聞きました。 (君塚陽子)
消費者委員会 専門調査会委員 矢野洋子さんに聞く
「託送料金」は、本来、送配電にかかる費用に限定すべきです。昨年10月、埼玉県で電気ケーブルの老朽化で火災になり、都内で大規模な停電になったことがありました。送配電網のメンテナンスも大切です。
「託送料金」は、経産省の手続きで決めることができ、国会に、はかることもありません。金額の根拠も含めて情報開示をして、費用負担のあり方について国民的議論をすべきだと思います。
“福島を支える”としてノーと言わせないようなやり方も疑問です。復興を願わない人はいませんし、民間で多くの支援活動が継続されています。費用負担は責任を明確にして行うべきです。原発事故は東電の責任であり、廃炉も発電事業者の責任です。
「託送料金」については、さまざまな問題を調査会の報告書で指摘しました。「事業者のコスト削減の結果が託送料金の値下げに反映されていない」「低圧需要(家庭向け)に過大な配分となっている」「事業者が地域独占で効率化を徹底する環境にない」などの懸念です。
対応策として「原価の洗い替え」「配分の修正」や監督官庁である経産省の対応強化などを提言しました。
また、送配電事業とは関係ない「核燃料サイクル」費用の一部や「電源開発促進税」(原発立地自治体への交付金など)が含まれていることは「消費者に十分周知・納得されているとはみられない」と述べ、エネルギー政策に関する国民の負担の在り方は別途、議論が必要」としました
「上乗せ」の前に、こうした課題の解決が急がれています。
(「しんぶん」赤旗2017年1月15日より転載)