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パリ協定批准審議・・エネルギー政策の矛盾を正せ

 2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みを決めた「パリ協定」を批准するための国会審議がようやく始まりました。昨年12月に採択されたパリ協定はアメリカ、中国、インド、欧州連合(EU)などがすでに批准しており、日本が批准しなくても11月4日には発効することが決まっています。世界で5番目の温室効果ガス排出大国で、国際的責任を果たすよう求められてきた日本の批准が遅れたのは重大です。安倍晋三政権は温暖化対策を抜本的に強化し、何より原発と石炭火力に依存したエネルギー政策を見直すべきです。

世界に遅れた日本の批准

 5月に三重県の伊勢・志摩で開かれた主要国首脳会議(サミット)でも「パリ協定の年内発効へ必要な処置をとる」と合意していたのに、臨時国会冒頭の安倍首相の所信表明演説ではパリ協定への言及がありませんでした。各国が次々批准し、11月の発効が決まってからようやく国会に批准のための承認案を提出してきた安倍政権の態度は、国際的にみても全く通用するものではありません。

 世界で200近くの国・地域が参加を表明しているパリ協定は、温室効果ガスの排出量で55%以上を占める55カ国以上の国が批准すれば発効することになっており、国連は今月5日、その条件は満たされたと発表しました。協定は30日後の11月4日には発効、7日からのモロッコでの気候変動枠組み条約の締約国会議に合わせパリ協定の締約国会議も開かれる予定で、詳しいルール作りが始まります。批准が遅れた日本はそれにも間に合わないことになり、国際的な批判を招くのは免れません。

 パリ協定は、産業革命後の地球の平均気温の上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えるため、今世紀後半の温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」とする排出抑制を各国に求めています。各国はそれぞれ排出抑制の目標を提出していますが、日本の目標(約束草案)は2030年度の削減目標を13年度比26%にとどめる不十分なものです。50年までに80%削減するという日本自身の長期目標とも整合性が問われます。目標は5年ごとに見直すことになっており、日本の目標引き上げは不可欠です。

 しかも、日本の温室効果ガス排出の約9割はエネルギー起源なのに、安倍政権のエネルギー政策は原発とともに温室効果ガスの排出が多い石炭火力発電所に大幅に依存するものです。温室効果ガスの発生が少ない太陽光、風力など再生可能エネルギーの活用は国際的にみても立ち遅れています。現在国内で新増設が予定されている石炭火力だけでも48基あり、これがすべて稼働すれば日本の温室効果ガスの排出は約1割増えるといわれます。安倍政権のエネルギー政策の見直しは不可欠です。

原発も石炭火力も頼らず

 運転開始から40年を過ぎた老朽原発を含め原発の再稼働を推進したり、原発や石炭火力を海外に輸出したりするなどというのも、論外です。安倍政権のエネルギー政策は国民の安全はもちろん世界の温暖化対策とも矛盾しています。

 東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けている国ならなおのこと、日本は原発にも石炭火力にも依存しないエネルギー政策に転換し、積極的な目標で世界の温暖化対策に貢献すべきです。

(「しんぶん赤旗」2016年10月23日より転載)