4月14日午後9時26分に熊本県熊本地方で発生したマグニチュード(M)6・5、最大震度7の地震(前震)から1カ月。16日午前1時25分にはM7・3、最大震度7の地震(本震)が同じ熊本地方で発生すると、その直後から熊本県阿蘇地方や隣接する大分県中部でもM5クラスの地震が頻発し、最大震度6強を各地で観測するなど、活発な地震活動が続いています。
1417回発生
今月(5月)13日午前1時6分にも熊本県宇城市などで震度4を観測しており、同日午後6時現在で震度1以上の体に感じる地震の回数は1417回に達しています。図は、前震発生以後に熊本地方で発生したM3・5以上の地震の回数を、2004年の新潟県中越地震(M6・8)などと比較したもので、熊本地震の例をみない活動性の高さを示しています。
これらの地震は、熊本県内を北東から南西へ延びる布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯や大分県東部の別府湾から西部にかけて分布する別府―万年山(はねやま)断層帯の活動によって引き起こされています。本震を引き起こした布田川断層帯について、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)はM7・0程度の地震が30年以内に発生する確率を0・0~0・9%としていました。
日本学術会議が5月2日に開いた「熊本地震・緊急報告会」では防災関係学会の報告が行われ、この中で日本地震学会の加藤輝之会長(東京大学地震研究所教授)は「(確率が)非常に小さい感じがするが、活断層の(活動の)繰り返し周期が数千年なので30年という短い期間では小さくなる」と、数字の“マジック”に注意をうながしました。
今回の地震では、熊本市や益城町などを中心に住宅被害が熊本県内で7万7000棟以上に上る(熊本県まとめ、12日午後4時半現在)など、多くの建物に被害が出ています。日本地震工学会の楠浩一・東大地震研准教授は、益城町では通りの両側の建物の倒壊率が71%に達していた場所があることなどを報告しました。
加藤氏は、熊本地方が九州の中では地震の被害を受ける確率が比較的高いところだと指摘。その理由として布田川断層帯や日奈久断層帯といった活断層があるだけでなく、地盤が悪く地震波が増幅され、揺れが大きくなりやすいことをあげました。
耐震性が課題に
日本建築学会の高山峯夫・福岡大学教授は、前震で被害がなさそうな建物が本震で倒壊したケースが多数あることを紹介しました。高山氏は、地震が立て続けに起こる場合、建物の耐震性をどのように評価するか、今後の課題だと述べました。
阿蘇地方では阿蘇大橋が地すべりで崩落するなど、斜面の地すべりや亀裂が多数発生しました。日本地すべり学会の福岡浩・新潟大学災害・復興科学研究所教授や砂防学会の山下伸太郎理事が状況を報告し、今後の雨や地震で新たな土砂災害が懸念されると警告しました。
熊本地震は、まだ終息の見通しが立たない状況が続いています。今回の地震によって布田川断層帯と日奈久断層帯の延長方向で応力が増大したことで新たな地震活動につながるのではと懸念されています。
加藤氏は北東方向の延長線上にある日本最大の活断層、中央構造線への影響が懸念されるとするとともに、布田川断層帯と日奈久断層帯の南西側にも未破壊部分が残っており注意が必要だと指摘しました。
(間宮利夫)
(「しんぶん赤旗」2016年5月14日より転載)