福島第1原発で、またタンクから大量の汚染水漏れが起こりました。今回の事故は、東電がこれまでの教訓をふまえて異常を検知した際に早期に対応していれば流出量を最小限にとどめられたものでした。深刻な事態に至るまで手をうたなかった東電の事故処理対応のお粗末ぶりが、あらためて浮き彫りになりました。
H6エリアにある当該のタンクで水位上昇の警報が発生したのは、漏えい発覚の9時間以上も前の2月19日午後2時すぎのことでした。すでにほぼ満水で注水されるはずのないタンクです。しかし東電はその後、タンク周りを確認しただけで、水位が本当に上がっているのか点検しませんでした。
そのころ、タンクには注水が始まっていた可能性が濃厚です。この水は本来、別のタンク群(Eエリア)に送られるはずでした。ポンプは記録から、午後1時45分から同11時までに3回、運転されていました。その間、Eエリアのタンクの水位はほとんど上がっていなかったといいます。
不備重なる
なぜ別のタンクに水が送られ、それが継続したのか。東電の説明からは、水の送り先を変える弁にいくつかの不備が重なったことが浮かび上がります。
ポンプからは各タンクエリアへと配管がつながっていますが、当該タンクの手前に弁が3個ついています。最上流側の弁は閉じていましたが、残りの2個の弁は、いずれも開いていました。本来、三つとも閉じているはずでした。弁の運用ミスの可能性があります。
最上流の弁は閉じているのに、水が流れたことから、この弁が壊れていたと考えられます。
真剣さない
事態を悪化させたのは、水位計の警報が発生した後のお粗末な対応です。東電は、午後3時にタンク周りを点検しただけで、二つの弁が開いていることに気づきませんでした。4時のパトロールでも異変を見逃し、結局、漏えいを確認したのは午後11時25分ごろのパトロールでした。
福島第1原発ではこれまで、注水配管の取り違えや過剰な注水などによって、タンクからの汚染水漏れが何度も繰り返されてきました。しかし、東電は警報が発生したのに「計器の故障と考えていた」とのべるなど、汚染水問題に真剣に取り組んでいるとはいえない状況です。
東電の対応のお粗末さと、「国が前面に立つ」としているのにきっちり管理できていない政府の姿勢が、今回の問題でも問われています。
(原発取材班)