東京電力は2月24日、福島第1原発で100トンあまりの高濃度汚染水がタンクから漏れた問題で、配管に取りつけられた三つの弁のうち二つは、昨年4月から開いた状態だったことを明らかにしました。東電の汚染水管理に対する態度の甘さがあらためて露呈しました。
東電によると、水漏れが起きたH6エリアのタンクは昨年春に設置され、4月17日に容量の97・9%まで注水が終わっていました。三つの弁は本来閉じておくべきでしたが、再注水する際の作業効率を上げるため、弁を一つだけ閉めて残り二つは開けたままにするよう指示を出したといいます。
水漏れは19日、滞留した汚染水を処理した後の廃液を移送する際、本来はEエリアにある別のタンクへ移送する予定でしたが、予定になかったH6エリアのタンクへ水が流れたため、容量を超えてあふれたもの。二つの弁が以前から開けたままになっていたため、一つの弁を開ける操作だけで当該タンクへ注水されました。
一方、Eエリアへつながる弁は閉じられており、Eエリアタンクの水位上昇も停止していたことが分かっています。なぜ弁の操作が起きたのか、東電は調査しています。
解説・・ぎりぎり狙い危険性軽視
今回の汚染水漏れの背景には、タンク増設の遅れに真剣に向き合わず、あふれる寸前まで汚染水を入れてその場をしのごうとする東電の姿勢があります。
24日の記者会見では、H6エリアタンクに「再注水の可能性があった」としたことについて「すでに満タンだったのでは」と問われた尾野昌之原子力・立地本部長代理は「ぎりぎりをねらっていた」と答えています。
昨年10月にも傾いた地盤に設置した別のタンクで過剰な注水によって天板から水があふれる事故が起きています。この際も東電は「ぎりぎりをねらいすぎた」と話していました。
それを教訓とせず東電が、満水寸前でタンク運用を続けてきたことがわかります。
そのうえ今回、タンクの水位が高いという警報が発生しても実際に水位を確認せず、水漏れ発見は9時間以上後でした。危機管理に対する態度が根本的に問われています。
タンク増設の必要性は早くから指摘されていました。しかし今回の事故発生後も東電は「水位はもとより下げたいが現実の問題としてできない」という無責任な対応です。10月の汚染水漏れでも「やらなければいけないことが多重的に増えている」とタンク対策の遅れを言い訳しています。
タンクの増設・置き換え以外にも、廃炉作業や建屋地下へ流入する地下水を減らす、汚染水の海洋流出防止などさまざまな課題があります。柏崎・刈羽原発の再稼働に力を入れている余裕はありません。人員や資材を最大限投入して事故収束へ向けて努力すべきです。 (神田康子)