安倍晋三内閣は2月25日の原子力関係閣僚会議で、中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の政府案を決定しました。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原子力規制委員会の基準に適合した場合は「再稼働を進める」と明記するなど、改めて原発推進の姿勢を示しました。
ベースロード電源の意味について、経済産業省は「発電コストが低廉で、昼夜を問わず安定的に稼働できる電源」と説明しています。
昨年12月に経産省の審議会がまとめた原案では、原発は「基盤となる重要なベース電源」と位置づけられていました。茂木敏充経済産業相は閣議後の記者会見で、「(審議会案から)方向性が変わったとは認識していない」と発言。「原発ゼロなどと根拠なく示すのは責任あるエネルギー政策とは言えない」と述べました。
審議会案で「着実に推進」とされていた核燃料サイクルについても推進を明記しました。ただ、高速増殖炉もんじゅなどで重大事故が相次いでいることから「着実に」との文言を削除しました。
原発輸出の推進、学校での原発教育につながりかねない「エネルギー教育の推進」も盛り込まれています。
再生可能エネルギーについては「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」としました。ただ、太陽光発電と風力発電は発電コストが高いなどとし、需要の大きな時間帯だけを受け持つ電源を意味する「ピーク電源」に位置づけられました。
ベースロード電源・・ エネルギー基本計画の政府案は、原子力、石炭、地熱、水力をベースロード電源としました。太陽光、風力などは、発電コストは高いものの、需要変動に応じて供給量を機動的に調整できるピーク電源。天然ガスと液化石油(LP)ガスは、需要変動に対応できるが、発電コストが中程度になるミドル電源に位置付けました。
福島事故への反省がない・・原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員 伊東 達也さん
原案に対する国民の反発を受けて少し言葉をいじっただけ、原発推進の本質は変わっていません。原発を「優れた安定供給性と効率性を有し」などとしていますが、これまでもさまざまな事故などで停止しており、実際は非常に不安定です。コストについても、税金で肩代わりしている分や使用済み燃料の処分や事故のコストを考えていません。
また、原発依存度について「可能な限り低減させる」とありますが、これまで原発推進のために掲げたものと同じで、その点からしても“低減”に取り組む意思がないことは明白です。福島第1原発事故の経験の反省が見られない。再び推進の政策に限りなく近づく分岐点に来たと感じます。
原発の安全性に関しても規制基準を「世界で最も厳しい水準」としていますが、そもそもそれが大きな誤りです。多くの原発が人口密度の高い地域に隣接し、本来なら立地できないところにあります。「過酷事故、次も日本」という危険性を持っていると言わざるを得ません。原発をなくしたい国民との間にさらに大きな矛盾を広げる内容です。