原発の新規制基準に反して安全設備関連のケーブルが分離されていなかった問題で、全国の原発で同様の問題がないかどうかの調査がどこまで行われるか注視されていました。しかし、原子力規制委員会が、国内で唯一運転中の九州電力川内原発1、2号機や、再稼働の準備が進む関西電力高浜原発3、4号機を調査の対象外とした姿勢は、政府の原発再稼働推進方針に追従するもので、規制機関の名に値しません。
原発の安全設備関連のケーブルを系統分離することは、2013年7月に施行された新規制基準で義務化されたものです。ケーブルが独立して敷設されていなければ、他のケーブルで火災が起きた場合、原子炉内の状況把握や注水作業などに使うケーブルに延焼し、機器の機能が失われる恐れがあるからです。
規制委も電力会社の申請書類に事実と異なる記載があることを想定しておらず、現場で確認していないため、審査で問題を把握できていませんでした。そのため、ケーブルの不適切な敷設工事は東電柏崎刈羽原発で発覚後、別の電力会社の原発でも次々見つかり、すでに6原発13基(表参照)に上ります。審査の限界を露呈したものです。
今回の調査には、規制委で新規制基準の適合性審査が通った四国電力伊方原発3号機が含まれています。これまでのところ、問題が見つかっていませんが、審査の妥当性も問われる事態です。
6日の衆院本会議で、原発の再稼働をすべきではないと政府に迫った日本共産党の穀田恵二議員の代表質問に対し、安倍首相は、新規制基準について「世界で最も厳しい水準」と持ち上げましたが、その根拠のないことが改めて明らかにされた格好です。
規制委は、運転中の川内原発1、2号機については再稼働に向けた使用前検査の抜き取り検査で確認したとし、高浜原発3、4号機についても使用前検査で点検すると説明。抜き取り検査だけで済ませて特別扱いするというのでは、到底、国民の理解は得られません。まず徹底した検証をするべきです。
(「原発」取材班)
ケーブル設置で不適切な状態が現時点で確認されている原発
■東京電力…柏崎刈羽(1)~(7)
福島第2(3)(4)
■中部電力…浜岡(4)
■北陸電力…志賀(1)
■東北電力…東通(1)、女川(3)
(※マル数字は号機)
(「しんぶん赤旗」2016年1月7日より転載)