日本共産党嶺南地区委員会 > その他 > 決定は関電の主張のコピペ・・高浜原発の再稼働認める/福井地裁 仮処分取り消し

決定は関電の主張のコピペ・・高浜原発の再稼働認める/福井地裁 仮処分取り消し

高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分を取り消す地裁決定を知らせる住民ら。=12月24日、福井地裁前(写真=山本雅彦氏)
高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分を取り消す地裁決定を知らせる住民ら。=12月24日、福井地裁前(写真=山本雅彦氏)

 福井地方裁判所(林潤裁判長)は12月24日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定を不服とし、関電が申し立てた異議審で、異議を認め、仮処分決定を取り消しました。これにより、野瀬豊高浜町長と西川一誠県知事がすでに同意しており、再稼働が可能となりました。

 また、同地裁は同日、異議審と並行して審理を進めていた大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働差し止め仮処分について、再稼働が迫っていないとして判断を示さず、住民の主張を却下しました。

 判決を受けて開いた報告集会で河合弘之弁護士は、「一言でいって、この決定は関電の主張のコピペ(コピー&ペースト)だ」と強調した上で、「規制委員会の判断に追随するだけの形で関西電力の主張を容れ、債権者(住民側)らの主張を無視する判断をしており、福島第1原発事故に何ら学ぼうとしない、そして、今なお避難等を強いられている福島の方々の思いに向き合おうとしない、極めて不当な決定で、高浜原発3、4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定」(弁護団声明)と指摘しました。

 さらに同弁護士は、多重防護の考え方について「一層から五層ある防護について、四層である炉心溶融は起きない、起きたとしてもその影響は無視できるほど小さいとし、福島のような事故は起きないから五層も必要ないとハッキリいっている。したがって世界標準である多重防護の考え方を否定した決定だ」と強調しました。

 申立人代表の今大地晴美さんは、「『司法よ!おまえもか』と言わざるを得ない」と怒りをあらわにし、「私たちは今日のこの日の『怒り』をエネルギーにして、『正義は勝つ』その日まで、さらにたたかい続けます」と話しました。

 仮処分決定が取り消されたことで、住民側は対抗手段として、「可及的速やかに、名古屋高裁金沢支部に保全抗告する」と発表しました。

多重防護・・・・

 多重防護は、IAEA(国際原子力機関)の定義によれば、深層防護と同義語で、5層の深層防護、5つの層から成り立っています。

 1層から3層まではECCS(非常用炉心冷却装置)など、想定される安全設計で対応するとされています。

 4層とは、原子炉を冷却できないような過酷事故(シビアアクシデント)が起きた場合でも、福島のような事故で炉心が溶ける(炉心溶融)ことがないように対策をしておくのが第4層です。

 5層とは、福島第1原発事故のように環境中に放射性物質が放出された場合でも、人々の生命に危険が及ばないように対応しようというのが第5層です。

(2015年12月24日、山本雅彦)


 

福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明

 高浜原発3・4号機については、本年4月14日、福井地方裁判所の樋口英明裁判長、原島麻由裁判官、三宅由子裁判官による運転差止仮処分命令が発令されていましたが、本日、同裁判所の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官により仮処分命令は取り消されました。

 福島第一原発事故のような事故を二度と招いてはならない、というのは、改正原子炉等規制法の立法趣旨であり、私たちは、このような観点から新規制基準の不合理性、基準地震動の策定手法の不合理性、津波の危険性、工学的安全性の欠如、シビアアクシデント対策・防災対策・テロ対策の不備といった様々な危険性を指摘しましたが、本決定は、これらの指摘に真摯に答えることなく、規制委員会の判断に追随するだけの形で関西電力の主張を容れ、債権者らの主張を無視する判断をしており、福島第一原発事故に何ら学ぼうとしない、そして、今なお避難等を強いられている福島の方々の思いに向き合おうとしない、極めて不当な決定であると考えます。

 林潤裁判長は、11月13日の審尋期日の際に「常識的な時期」に決定を出すと発言しましたが、私たちが指摘したすべての問題点について正面から検討した上で本日12月24日に決定を出すというのは「常識的な時期」とは到底いえず、年末も押し迫った常識外れなこの時期に出した本決定は、高浜原発3・4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定であると言わざるを得ません。

 私たちは、高浜原発3・4号機の再稼働阻止をあきらめた訳ではありませんが、万一同原発が再稼働して重大事故を起こした場合、本決定を出した林潤裁判官、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官の責任が問われることになるでしょう。

 私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します。

2015年(平成27年)12月24日
説原発弁護団全国連絡会、大飯・高浜原発差止仮処分弁護団
共同代表 河合弘之・海渡雄一

高浜原発保全異議決定文要旨

高浜原発保全異議決定文全文