原発に注目が集まる傍らで、もう一つ危険な動きが進んでいます。安倍晋三政権が策定したエネルギー基本計画案で、原発と並び「重要なベースロード電源」と位置づけられた石炭火力発電の推進です。
石炭火発は温室効果ガス排出量が他の電源と比べ突出して高く、多くの環境団体が新たな建設に反対しています。世界銀行はじめ各国の金融機関も、融資の見直しをはじめています。
安倍政権のエネ計画案は、石炭火発について「地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量当たりの単価も化石燃料の中で最も安い」と指摘。環境性能に優れた日本の石炭火発を輸出すれば、むしろ「地球全体で環境負荷の低減」が可能になるといいます。
電力10社でつくる電気事業連合会が1月に自民党国会議員に配った文書にも「石炭火力の高効率発電技術による国際貢献を推進する」との一文があります。
しかし、開発中の次世代型高効率石炭火発でも、温室効果ガスの排出量は液化天然ガス火発の約2倍。温暖化対策への逆行は明らかです。
安倍政権は、石炭火発の高効率化にむけ来年度予算案で約84億円を計上しています。エネ計画案は、東電が福島で計画している高効率石炭火発の実証プロジェクト推進も盛り込んでいます。
一方、エネ計画案は、原発停止による温室効果ガス増加が企業活動に悪影響を与えているとし「企業の海外移転の加速につながる」と主張します。温暖化を加速させる石炭火発を進めながら、温暖化を原発再稼働の口実にしているのです。
原発で核のごみを増やし、石炭火発で温暖化を加速・・安倍政権のエネ計画案は人類の未来を危うくします。
(佐久間亮)