20年前に事故を起こし、運転再開の見通しが立たない高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県)に対し、原子力規制委員会がこれまでの運営主体、日本原子力研究開発機構には安全に運転する能力はないと、あらたな運営主体を見つけるよう文部科学相に勧告することを決めました。「もんじゅ」は運転を停止していても周辺に集中立地する原発とともに住民の暮らしを脅かし、巨額の費用もかかります。存続させること自体が有害であり、ただちに廃止すべきです。
20年前に大事故起こし
「もんじゅ」は、ウランを燃料に発電する原子力発電所の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを再利用して発電する原発です。燃料にしたプルトニウムをさらに再処理すれば、燃やした以上の燃料が取り出せるというので、「核燃料サイクル」を実現する「夢の原子炉」だとまで宣伝されました。
しかし、猛毒で原爆の材料にもなるプルトニウムは取り扱いが極めて困難です。しかも、高速増殖炉の炉心を冷やす冷却材には普通の原発のように水ではなく、水分に触れれば大爆発を起こすナトリウムを使うので、技術的にも難しく、運転は極めて危険です。
実際「もんじゅ」も1994年に臨界に達した後、翌95年にはナトリウムが漏れ出す大事故を起こし、以来20年間も運転できていません。世界各国でも高速増殖炉の開発に取り組みましたが、いまでは日本以外の国は相次いで開発を中止しています。「もんじゅ」を存続させても、運転できる見通しはほとんどありません。
運転を停止しているうちにも設備は老朽化し、試運転を始めても事故が続き、2012年には約1万件もの機器の点検漏れも発覚しました。原子力規制委は一昨年運転再開の準備そのものを禁止、その後も点検計画の前提になる機器の重要度分類の誤りなどが判明しました。このため今回、原子力規制委がついに、運転を停止していてもまともに管理できないのに運転再開などあり得ないと、原子力研究開発機構以外の運営主体を探すよう、異例の勧告に踏み切ったのです。
原子力規制委は、「もんじゅ」の計画そのものの中止を求めていませんが、運営主体を変えればうまくいくという保証はどこにもありません。もともと原子力研究開発機構が運営主体となったのも、ナトリウム漏れ事故を起こした当時の動力炉・核燃料開発事業団を改組した核燃料サイクル開発機構から引き継いだものです。運転再開の見通しが立たない以上、計画そのものを中止すべきです。運転を停止していても、1日約5千万円もかかります。再開はあきらめ、「もんじゅ」は廃止すべきです。
「核燃料サイクル」撤退を
問題の根本には、破綻した「核燃料サイクル」政策に政府があくまで固執し続けていることがあります。安倍晋三政権が昨年決めた「エネルギー基本計画」も、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、「核燃料サイクル」の推進や「もんじゅ」の継続を打ち出しています。こうした政策そのものを根本的に見直すべきです。
「即時原発ゼロ」を実現し、「核燃料サイクル」政策から撤退してこそ、原発事故の危険を根本からなくすことができます。
(「しんぶん赤旗」2015年11月6日より転載)