国際原子力機関(IAEA=天野之弥事務局長)は8月31日、東京電力福島第1原発事故を検証した最終報告書を公表しました。そのなかで、日本の原発は安全だという電力事業者の根拠のない思い込みにくわえ、規制当局も政府も疑問をもたなかったことが事故の主な要因であり、結果として「重大な事故への備えが不十分だった」と指摘しました。
現在、安倍政権が“新たな安全神話”をふりまき、全国の原発で再稼働の動きを進めていることへの警鐘ともなるものです。
報告書は、津波にたいする原発の設計上の弱点を指摘。国の地震調査研究推進本部が2002年に提案した手法にもとづく津波の高さの評価で、現実に起こったのと同レベルの津波が11年の事故前に予想されていたにもかかわらず、追加の措置を取らなかったことを問題視しました。
また、許認可などでの安全解析で、炉心の重大損傷につながるようなことが複雑に連鎖する可能性を十分に取り扱わなかったこと、とくに事故時の指針の弱点が特定できなかったことに言及。複数の原子炉の電源喪失や冷却不能の事態に十分な備えがなかったと断じました。また、事故当時の規則や手順書の内容が、危険に対する評価や安全文化の面で国際的な慣行に完全に沿うものではなかったとしています。
一方、溶融した核燃料の回収や大量に発生する放射性廃棄物について、事故特有の解決策や複雑な管理など努力を要すると述べています。地域社会の再生や住民への補償についても強調しました。
IAEAは、原子力の平和的利用の促進と軍事的利用への転用防止を目的に掲げる国際組織。164カ国が加盟(2015年3月現在)。
(「しんぶん赤旗」2015年9月2日より転載)