東京電力福島第1原発事故から5年目の夏、原発再稼働と加害者責任をテーマに、科学技術と社会科学の両面から議論するシンポジウムが東京都内で開かれています。8月29日は約70人が参加し活発に討論しました。主催は日本科学者会議原子力問題研究委員会。
九州電力が再稼働を強行した川内原発の地元から参加した木下紀正鹿児島大学名誉教授が、火山噴火の危険性、地域防災の問題点を報告しました。各地の参加者が、東海第2、浜岡、志賀、高浜など各原発の再稼働をめぐる現状、科学者会議による活断層調査、住民運動や原発訴訟の成果などを紹介しました。
日本原子力研究開発機構で長年、原発の安全解析をしてきた田辺文也・社会技術システム安全研究所長は、福島事故について▽2号機格納容器は地震に耐えられなかったのではないか▽2、3号機で事故時の操作の手順書が参照されずに炉心溶融に至ったのではないか―という疑問点を提起。未解明の重要課題を残した再稼働について「科学的合理性の立場に反する」と批判しました。
原発メーカー設計技術者だった後藤政志さんは、国の審査の対象外とされた、溶融燃料による水蒸気爆発の危険性を指摘。「現在の原発は基本的な問題解決ができておらず、対症療法的にやっている」と述べました。
舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)は原発が抱える根本的な危険性を解説し、「新規制基準は、現存の原子炉を救済するためのつぎはぎの弥縫(びほう)策だ」と指摘しました。
(「しんぶん赤旗」2015年8月30日より転載)