東京電力福島第1原発事故による避難生活を苦に自殺した福島県浪江町の五十崎喜一さん=当時(67)=の妻栄子さん(66)ら遺族3人が東電に約8700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、福島地裁でありました。潮見直之裁判長(西村康夫裁判長代読)は、自殺の要因となったうつ病について、原発事故による避難生活のストレスが原因と断定。総額2721万5016円の賠償を命じました。
東電側は、五十崎さんが患っていた既往の糖尿病がうつ病の発症につながったと主張し請求の棄却を求めていましたが、判決は東電の主張を退けました。
原発事故が原因で自殺したとして東電に賠償を求めた訴訟で因果関係を認めた判決が出るのは昨年8月の川俣町山木屋の渡辺はま子さん=当時(58)=の遺族による訴訟に続いて2例目。
訴状によると、五十崎さんは2011年7月23日に避難先の二本松市のアパートを出て、24日、飯舘村の真野ダム付近で亡くなっているのを発見されました。
判決は、喜一さんのストレスは多額の財産を失う以上に大きな喪失感をもたらしたと推察され、ストレス強度評価で強度3程度かそれ以上だったと認定。東電は、原発事故が起きれば、該当地域の居住者が避難を余儀なくされ、避難者の中にはうつ病をはじめとする精神障害を発病し、さらには自殺者が出現するであろうことについても予見可能だったとして、喜一さんの自殺との間には、相当因果関係があると認めました。
しかし、原発事故が喜一さんに与えたストレス要因は6割として4割を減額しました。
原告の栄子さんは記者会見し「浪江から二本松市に着の身着のままで避難してきました。夫と同じ状況に避難者は置かれています。誰かが発信しないといけないと訴えてきました。東電の謝罪が一度もなく謝ってほしい」と話しました。
(「しんぶん赤旗」2015年7月1日より転載)