学校、教育委員会、大学、支援の民間団体が協力し、子どもの課題を共有し解決しようという試み(地域学習支援プログラム「大熊モデル」)が、福島県会津若松市ですすんでいます。その報告書がまとまりました。
(中村秀夫)
避難先の会津若松で地域学習支援
東京電力福島第1原発事故で全町避難となった大熊町が、同市に役場を設け、幼稚園1園、小学校2校、中学校1校を開校。約350人が通っています。
避難の長期化で、子どもたちが見せる精神的不安定、学習の遅れ、運動能力の低下・・。それは自分だけでは解決できないと、学校、学童保育、学習支援(仮設住宅の集会室で週2回)などの関係者が、昨年(2013年)6月からほぼ毎月会議(大熊町地域学習応援協議会)を開き、情報共有などをして教育や支援の質を高めようとしています。
報告書は、参加する学生や民間団体の10人が執筆。会津大学短期大学部の戸田典樹教授(4月から神戸親和女子大学教授)が中心になってまとめました。
活動を通して確認できたのは、原発事故直後、避難町村のなかでもっとも早く再開した小中学校が、子どものつながりや心の安定を確保し、コミュニティー再生に大きな役割を果たしたということです。
学習支援や学童保育の活動は、勉強をみるだけでなく、話し相手になることから、避難してきた子どもたちへの精神的サポートになったと指摘します。
それを「ななめの関係」と位置づけます。教師と子どもという横の関係、子ども同士という横の関係ではなく、勉強を通じてなんでも話せるお姉さんお兄さんとの「ななめの関係」も大事だとわかったといいます。
一方で、課題も浮かびます。次第に学生ボランティアが少なくなっているなど、継続のための仕組み(活動費の支給など)や、機関・団体の連絡調整役の確保が必要だと指摘。子どもの精神的・不安定は教育関係者だけの努力では限界があるとして、住居と職業を確保する生活再建へのとりくみが必要だと訴えています。
大熊町地域学習応援協議会・・参加しているのはつぎの機関・団体です。町の教育長、小中3校の各校長、会津大学短期大学部、学童保育を運営しているNPO法人寺子屋方丈舎、週2回の学習支援をしている会津大学短明大学部学生ボランティア連絡会、避難者支援のあいづひまわりプロジェクト、セイブザチルドレンジャパン、全国寺子屋ネットワーク。
(しんぶん赤旗2014年5月8日付けより転載)