「お客さんにおいしいと言ってもらえることが一番の喜びですね。いろんな方と新しいつながりができるのもうれしい」。こう話すのは、岩手県大船渡市の復興商店街「大船渡屋台村」で飲食店を営む男性(42)。2011年3月3日、念願の店を構えた矢先、津波ですべてを失いました。
仮設店舗では
同県の仮設店舗は約1700軒。東日本大震災の被害が大きかった宮城、岩手、福島3県の過半数を占めます。
しかし、仮設店舗で営業する業者の多くは、本格再建への展望を見いだせていません。客足も減少傾向にあります。
男性は、「再建に1千万円はかかります。土地も金もない。どうすればいいか困っています。みんなそうですよ。国の支援は多ければ多いほど助かります」と話します。
同市の復興商店街「おおふなと夢商店街」の鍼灸(しんきゅう)院も患者が減少。被災者の生活難やJR大船渡線の不通が影響しています。院を営む男性(54)は「再建のめどはまったくない。商店街で新しくビルを建てる話も聞きますが、テナント料が高く入れません。市街地の建設費も高騰しています」
国のグループ補助金事業(復旧・整備費の4分の3)は被災業者の再建の力となっています。同事業は被災者の運動と、これに連携した日本共産党国会議員団などの奮闘で実現しました。しかし、膨大な申請書類など負担が大きく、利用できない業者も多くいます。
大船渡民主商工会の千葉雄生事務局長は、「グループ補助の残り4分の1が出せず、『借金を子に残せない』と廃業する人もいます。もっと国の支援が必要です」と指摘します。
漁業・水産業
同市の主要産業は漁業、水産業。カキ、ホタテ、ワカメの養殖やサンマ漁が盛んです。
大船渡民商会長でカキ養殖業の新沼治さんは、15台の養殖イカダと作業船3隻、自宅を津波で失いました。
水産庁の復興事業で復旧費用の約9割が助成されますが、それでも新沼さんの自己負担は1千万円を超えます。
「国の支援がなければわれわれは立ち上がれませんのでありがたい。でも、補助には制約が多く、被災者の要望に必ずしも沿っていません。資金難に後継者問題も重なって廃業する漁家も多くいます」
安倍政権が進める消費税増税、TPP(環太平洋連携協定)参加、宮城県が進める水産特区など、復興に逆行する動きもあります。
新沼さんは語ります。
「消費税を増税したら生活再建支援金分が持っていかれてしまいます。復興への冷や水どころじゃない。個人財産を理由に業者への補助に制約を加える姿勢を改め、被災者本位の復興支援を強めるべきです」