10年前、関西電力大飯原発(福井県)の運転差し止め訴訟で裁判長として差し止めを命じた樋口英明さんが近著に書いています。「原発を止めなければならないという思いは、判決当時よりも現在の方が更に強くなった」▼東京電力福島第1原発事故が示したように、原発は人が管理し続けない限り事故になり、事故が起きれば被害の大きさは想像を絶する―。樋口さんは、この本質を知れば知るほど、止めなければ…との思いだといいます▼今年は東北電力女川原発2号機(宮城県)、中国電力島根原発2号機(松江市)が相次いで再稼働しました。島根原発は県庁所在地にある唯一の原発で県庁から直線で10キロ未満。事故が起きた場合の避難計画の策定が義務づけられた30キロ圏内に島根、鳥取両県の6市に約45万人が暮らします。再稼働した原発では最多▼計画では5キロ圏内の住民がまず避難。30キロ圏内の住民は屋内退避し、放射線量の状況をみて避難します。避難先は広島、岡山にまで▼能登半島地震は地盤の隆起、土砂崩れ、家屋の倒壊、道路の寸断など甚大な被害をもたらしました。屋内退避一つとっても、家屋の倒壊が相次ぐと期待できず、避難の困難さを浮き彫りにしました▼「(事故を想定して)避難計画を立て、ヨウ素剤の準備までして…決死隊まで準備しておかなければならない発電方法とは一体何なのだろうか」。樋口さんは、クリーンな発電方法はいくらでもあるのだからと、原発の稼働の是非について国民的な議論を呼びかけます。
(「しんぶん赤旗」2024年12月11日より転載)