東京電力は10月4日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で、汚染水から放射性物質を減らす「多核種除去設備」(アルプス)の異常を示す警報が鳴り、汚染水処理ができない状態になったと発表しました。処理の停止は先月も発生し、試運転開始から2回目。原因調査を終え、約12時間後に運転を再開しました。
東電によると、警報が鳴ったのは4日午前6時45分ごろ。これまでのところ、汚染水の漏えいは確認できていません。
警報が鳴ったのは、設備内で廃液を移送するタンク間のトラブルによるもの。廃液を送る側のタンクで、排水する水位となって移送するラインの弁が開いたのに、廃液を受け入れる側のタンクでは、受け入れ停止の信号が出たためといいます。東電は「想定していなかった」と説明。
廃液は、放射性物質を処理する吸着塔で目詰まりの可能性があるとして、洗浄するために使った液体だといいます。
東電は、廃液を受け入れる側のタンクについて、トラブルで停止中のB系統にあるタンクに切り替えるなどの措置をとったといいます。
アルプスは、政府や東電にとって汚染水対策の「切り札」と位置づけられており、現在は試運転中。しかし、トラブルが相次いでおり、安定的な運用ができていません。
今回警報が鳴ったアルプスは9月27日に試運転を始めましたが、約22時間後にトラブルが発生し、処理を停止しました。東電は、回収すべきだったゴム製の敷物が装置のタンクに放置され、廃液の流路をふさいだことが原因と説明。30日に試運転を再開したばかりでした。
東電は停止中の2系統のうちA系統の再開準備で、試運転中のC系統のタンクを使うため、C系統を5日から一時停止すると発表しました。
アルプス セシウム吸着装置で取り除くことができない、ストロンチウム90など62種類の放射性物質を取り除く目的で導入された設備。トリチウム(3重水素)は取り除くことができません。A、B、Cの3系統があり、それぞれ1日250トンの処理能力があるといいます。しかし、A、B系統は3月と6月に試運転を開始したものの、処理前の汚染水をためるタンクで腐食が見つかり、8月に運転を停止。今回、試運転しているのは残るC系統。
タンク漏れ・・側溝の放射能高レベル続く
東京電力は10月4日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の傾い夕ンクから高濃度の放射能汚染水が外洋に流出した問題で、外洋につながる側溝から8日に採取した水の分析結果を発表しました。流出が発見された2日夜から、放射能濃度は高いレべルで継続しています。
側溝下流側で3日に採取した水の放射能濃度は、セシゥム134が1リットル当たり180ベクレル、 セシゥム137が同480ベクトル、全ベータ(スト口ンチウム90などベータ線を出す放射性物質)が同1万3000ベクレルでした。 前日に同地点で採取した水と比ベて、セシウムはいずれも約1・5倍に上昇、全ベータは前日の同1万5000ベクレルから低下しました。
一方、夕ンタ脇の側溝で3日に採取した水は、全ベータが前日の同5200ベクレルから同7100ベクレルに上昇。セシウム134、137はそれぞれ同36ベクレル、81ベクレルで、いずれも前日の半分程度でした。
東電によると、タンクの周りを囲む堰の外への汚染水流出は、早ければ2日午前8時40分ごろに始まり午後9時ごろまで、堰内への汚染水漏れは3日午後2時ごろまで続きました。