中国電力は、原発で出た使用済み核燃料を一時的に保管する中間貯蔵施設を山口県上関町(かみのせきちょう)に建設することを検討すると発表しました。関西電力と共同して行う方針です。中国電力は2日、同社の所有地で調査を実施したい意向を町に説明しました。同町では1982年に原発建設計画が浮上しましたが、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、動きは中断していました。新たに持ち上がった中間貯蔵施設建設に、町民から批判と懸念の声が上がっています。
核燃サイクルの破綻の中
原発で使った核燃料は、敷地内の使用済み核燃料プールに保管されています。日本政府は、使用済み核燃料を再処理して、ウランとプルトニウムを取り出して核燃料として再利用する「核燃料サイクル」の実現を掲げています。
しかし、青森県六ケ所村の再処理工場は着工から30年たっても完成の見通しがありません。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていません。「核燃料サイクル」そのものが破綻しています。
この状況の中で、行き場を失った使用済み核燃料は全国各地の原発敷地内プールでたまり続けています。今年3月時点で、原発を持つ大手電力会社10社のプール容量の8割近くまで埋まっています。プールが満杯になると、核燃料の取り出しができずに、原発は運転できなくなります。
中間貯蔵施設についても、政府や電力業界の思惑通りに進んでいません。現在、青森県むつ市で全国唯一の中間貯蔵施設が建設中です。同施設は東京電力と日本原子力発電による共同開発です。20年、大手電力会社でつくる電気事業連合会が同施設を共同利用する案を発表しました。しかし、当時の宮下宗一郎・むつ市長が反対し、頓挫しています。
深刻な矛盾が顕在化しているのは関西電力です。福井県内にある同社の美浜3号機、高浜1号機、同2号機は5~7年ほどでプールが満杯になる見通しです。この3原発は運転開始から40年超です。3原発の再稼働について県知事の同意を得る際、中間貯蔵施設の県外候補地を23年末までに確定すると約束しました。期限内に実現できないと3原発を停止するとも表明しました。関西電力は今年6月、使用済み核燃料の一部を研究のためフランスに搬出すると発表し、「約束は果たされた」と述べましたが、反発の声が上がりました。
中間貯蔵といっても、その後の搬出先のあてがない状態では、そのまま使用済み核燃料が置かれ続ける危険は消えません。核燃料サイクルが行き詰まっているなかで、原発を動かし続けること自体に無理があります。
政府の固執姿勢は重大
岸田文雄政権は21年、原発依存を盛り込んだ第6次エネルギー基本計画を決めました。同計画は、使用済み核燃料の貯蔵能力の拡大をうたい、原発施設内外を問わず中間貯蔵施設などの建設・活用促進を強調しています。西村康稔経済産業相は、今回の中国電力などの動きを「意義がある」と評価しました。見通しのない「核燃サイクル」への固執姿勢は重大です。
地域に矛盾を押し付ける原発の推進をやめ、使用済み核燃料をこれ以上増やさないために、「原発ゼロ」の決断が必要です。
(「しんぶん赤旗」2023年8月4日より転載)