【ロンドン、ベルリン=時事】ロシア占領下にあるウクライナ南部ザポロジエ原発で、ロシア軍が「危険な挑発行為」を準備していると警告が出され、懸念が広がっています。ロシア軍が破壊工作を仕掛けながらウクライナの仕業にするとの見方もあり、報道によると、被害を恐れる住民の間では4日夜から5日にかけて脱出の動きが相次ぎました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日夜、ツイッターに「占領部隊が危険な挑発行為を準備している」と投稿。同日のビデオ演説でも「ロシア軍が爆発物に似た物体を電源施設の屋根に設置したとの情報がある」と警告を発しました。
一方、ロシア側も「ウクライナが5日夜、闇に紛れてドローンを使い原発攻撃を仕掛ける」(ロシア核関連企業関係者)などと主張し、双方が互いを非難する状況です。原発周辺に配置されたロシア兵の一部がここ数日で「撤退」した兆候を示す情報があり、ロシアが攻撃を「自作自演」するとの見方も出ています。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は5日、現場に常駐するスタッフからの報告として「これまでのところ、目に見える形で地雷や爆発物の(仕掛けられた)形跡はない」と説明。ただ、安全を確認するには原子炉建屋の屋上などの追加調査が必要だと指摘し、ロシア側に要請したと明らかにしました。
原発攻撃が取り沙汰される中、周辺住民の間にはパニックが広がり、国外脱出を試みる人が続出。英スカイテレビの記者によると、西方に位置する隣国モルドバ国境には越境希望者が殺到し、5日朝時点で3キロ以上の行列ができたといいます。
(「しんぶん赤旗」2023年7月7日より転載)