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主張 原発刑事裁判判決・・許されぬ東電旧経営陣の免罪

 2011年3月11日の東京電力福島第1原発事故を巡って業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の控訴審で、東京高裁は3人の無罪を言い渡しました。津波対策を怠り重大事故を引き起こした旧経営陣を免罪した一審判決に続く不当判決です。

 福島原発事故では避難の中で多くの命が奪われました。事故から12年となる今も多数の福島県民は元の暮らしを取り戻せていません。甚大な被害を招いた責任を不問に付すことはできません。

同じ証拠で正反対の判断

 東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人は16年、強制起訴されました。市民で構成する検察審査会が東京地検の不起訴処分を覆す議決をしたことに基づくものです。

 19年の東京地裁の一審判決は、原発の敷地を超える津波は予見できなかったなどとして3人を無罪にしました。東京高裁も、ほぼ同じ理由で一審判決を追認しました。旧経営陣が津波の危険を認識し、対策を講じる機会があったことは公判で浮き彫りになっていました。それにもかかわらず、責任を認めない旧経営陣の主張に追随した司法判断は、極めて重大です。

 刑事裁判とほとんど同じ証拠に基づいて争われた民事裁判(東電旧経営陣に賠償を求めた株主代表訴訟)の昨年7月の東京地裁判決は、今回の判決とは正反対に、旧経営陣の不作為を認め、約13兆円の支払いを命じました。

 二つの判決の違いは、政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した地震予測「長期評価」の評価です。「長期評価」は、福島県沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波地震が起きるとしていました。東電はそれに基づく試算をし、福島第1原発に最大15・7メートルの津波が来るとの結果を出していました。

 昨年の株主代表訴訟判決は「長期評価」は「適切な議論を経て一定の理学的根拠を示しており、相応の科学的信頼性を有する知見」と判断しました。東電の試算も信頼がおけると認定しました。さらに、「長期評価」の信頼性を認めず津波対策を講じなかった旧経営陣の姿勢は「著しく不合理で許されるものではない」と断じました。安全意識や責任感の欠如についても厳しく批判しました。

 原発被害への国の責任を認めなかった最高裁判決(昨年6月)も「長期評価」の試算は合理性があるとしています。1人の裁判官は信頼性が高いとし、それに基づく対策をしていれば事故は避けられたと指摘しました。「長期評価」の信頼性を否定し原発事故の危険に目をつむり、取るべき対策を取らなかった旧経営陣の姿勢を是認した今回の判決は大問題です。

再稼働・新増設をやめよ

 東電は、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の動きを強めています。岸田文雄政権は運転期間延長など原発回帰方針を打ち出しました。大事故の教訓に逆らう暴挙です。

 株主代表訴訟判決は、原発過酷事故について「住民に重大な危害を及ぼし、環境を汚染することはもとより、国土の広範な地域や国民全体にも甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティーの崩壊や喪失を生じ、ひいてはわが国そのものの崩壊につながりかねない」と警告しました。

 国の存続を脅かす政府の原発推進政策を許してはなりません。

(「しんぶん赤旗」2023年1月20日より転載)