東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審で無罪となった同社元社長の勝俣恒久被告と元副社長の武黒一郎、武藤栄両被告の控訴審第2回公判が2月9日、東京高裁(細田啓介裁判長)でありました。細田裁判長は、検察官役の指定弁護士側から請求があった現場検証と証人尋問をいずれも不採用とし、次回公判で結審すると表明しました。
裁判後の会見で告訴団の武藤類子団長は、「大変がっかりしているが、判決まで続けて地裁判決の不当性を社会に訴え続けていく」と語りました。
指定弁護士側は、一審東京地裁判決が、巨大津波を伴う地震の発生を予測した政府機関策定の「長期評価」の信頼性を否定したことなどを誤りと指摘。長期評価の策定にかかわった元気象庁幹部ら3人の証人尋問と地裁が行わなかった現場検証を求めていました。
細田裁判官はいずれも必要がないとして不採用としました。指定弁護士は、「禍根を残す」と異議申し立てをしましたが却下されました。
一方、長期評価の信頼性を認めた民事訴訟の高裁判決文書などが新たに証拠として採用されました。次回公判では、被害者による心情の意見陳述が行われます。
被告の3人は、津波が襲来する可能性を予見できたのに対策を講じないまま福島第1原発の運転を継続。原発事故で近くの病院の入院患者ら44人に避難を強いて死亡させたとして、16年に強制起訴されました。
(「しんぶん赤旗」2022年2月10日より転載)