【ベルリン=桑野白馬】欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は3月2日、脱炭素化に役立つ「グリーン」な投資先のリスト(EUタクソノミー)に原子力発電と天然ガスを条件付きで加える提案を正式発表しました。昨年末に欧州委が発表した草案には、22年中の原発全廃を決断したドイツ、オーストリア、スペインや、環境団体から批判が噴出していましたが、これを押し切った形です。
EUは、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ実現(気候中立)を目指しています。マクギネス欧州委員(金融サービス担当)は、電力生産の15%を占める石炭からの離脱が必要だとして、「気候中立への困難な移行に、原子力とガスがどう貢献できるかを打ち出した」と説明しました。
国民投票を通じて国内での原発を禁じてきたオーストリアのゲウェッスラー環境相は2日、チェルノブイリや福島などの原発事故や未解決の核廃棄物問題に触れて、「多くの専門家や加盟国の懸念に反しており、この決定は誤りだ」と発言。決定が施行されれば、EU司法裁に提訴すると述べました。
ルクセンブルクのトゥルメス・エネルギー相もツイッターで、強い反対を表明。オーストリアとともに「さらなる法的措置を検討する」としています。
ドイツのハーベック経済・気候保護相は2日、「原発は危険で高価であり、タクソノミーに含めるのは誤りだ」と批判しました。
提案は、加盟国で構成する理事会や欧州議会で承認されれば、23年から施行されます。
(「しんぶん赤旗」2022年2月4日より転載)