献金自粛表明の公益企業
2020年に安倍晋三元首相の後援会が開く予定だった「新春の集い」のパーティー券を中国電力(本店・広島市)が営業所の名義で購入していたことが、26日に山口県選挙管理委員会が公表した政治資金収支報告書で分かりました。電力会社は地域独占の公益企業のため、1970年代から企業献金の自粛を表明してきました。公益性の高い企業に事実上の企業献金であるパーティー券を販売した安倍氏側の見識も問われます。
(政治とカネ取材班)
「朝日」によると、安倍晋三後援会は20年2月8日と9日に、地元の山口県下関、長門市内の計3カ所で「新春の集い」を計画していました。しかし、新型コロナウイルス対応を理由に中止となりました。
同後援会の収支報告書には、同年2月28日付で中国電力下関営業所に会費3万円を返金した記録があります。
同社は当時、島根原発2号機(松江市)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査を受け、山口県上関町で上関原発の新設計画を推進していました。こうした動きがある中で、安倍氏の後援会にパーティー券代を支払った形です。
パーティー券の購入額が20万円以下の場合、収支報告書に企業名を記載する義務はありません。このため、企業名を隠したい企業は20万円以下でパーティー券を購入するとされています。今回は、中止に伴い返金したことで、購入者名が明らかになりました。
大手電力会社は献金自粛を表明しているため、幹部個人や子会社が献金してきました。それとは別に、名前が出ないパーティー券という形で政治家に献金をしてきた疑いがあります。
電力会社からの献金は、消費者が払った電気料金の還流ともなります。
本紙の取材に同社は、事実関係を含めて「個別の内容については回答を差し控えさせていただきます」とコメントしました。
同後援会は「新春の集い」の中止後、JR西日本(本社・大阪市)にも会費15万円を返金しています。同社は元国鉄であり、駅のバリアフリー化や地域交通の維持・改善事業などで国土交通省の補助金を受け、公共性の高い企業です。
(「しんぶん赤旗」2021年11月28日より転載)