原発事故全国弁護団連絡会(全弁連)は8日、参議院議員会館で会見し、各地の訴訟で東京電力が福島第1原発事故の責任を否定し損害賠償金の妥当性や金額の再立証を被害者側に要求しているのは「不必要に訴訟を長引かせ被害者救済を困難にする」と抗議声明を発表しました。
全弁連は、福島第1原発事故の被害者が東電と国を相手に損害賠償請求を求めた各地の集団訴訟を担当する弁護団でつくられたもの。声明は、東電が各地の訴訟で国の損害賠償の指針「中間指針」に基づいて、東電がこれまで支払った賠償金が「払い過ぎ」になっていると主張していると指摘します。
全弁連代表世話人の米倉勉弁護士は、これを裁判所が認めれば、原発事故の損害全てを被害者側が立証しないと追加の支払いを命ずることができないとされ、裁判がさらに長引く可能性が出て、事実上の被害者救済の放棄につながると批判。「全ての損害賠償請求の判決が、東電の賠償責任を認めた。不当な東電の訴訟活動がエスカレートしている事態を放置できない。東電に厳重に抗議し、主張の撤回を求める」と語りました。
吉廣慶子弁護士は「(東電側からは)長崎県佐世保市の実家に避難して子どもがいじめに遭った被害者に対し『方言の違いでいじめに遭うのは当たり前。自己責任だ』などという発言も存在した。東電はどちらが被害者だと思っているのか」と怒りの声を挙げました。
福島原発かながわ訴訟原告団の村田弘団長は「東電の主張は被害者のうち訴訟を起こしているのはほんの一握りで、ほとんどの人が満足しているというもの。怒りをこらえきれない」と述べました。
ふるさとをかえせ津島原発訴訟弁護団の白井剣弁護士は「もともと国と東電が放射性物質で汚した土地だ。きれいにして戻すのが当たり前なのに11年も放置した。その上で賠償金を払い過ぎたなどと主張している。被害者の怒りを伝えたい」と語りました。
(「しんぶん赤旗」2021年11月9日より転載)