茨城県知事選が19日告示(9月5日投開票)されます。政治団体「いのち輝くいばらきの会」が、茨城大名誉教授の田中重博氏(74)=無所属・新=を擁立し、日本共産党が推薦してたたかいます。現職の大井川和彦氏=自民・公明・国民推薦=が2期目の立候補を表明しており、一騎打ちの様相です。
汚染水放出に反対
「“待ったなし”の重大争点は東海第2原発の再稼働を許すかどうかだ」―。立候補表明の会見で田中氏は、運転開始から42年が経過し老朽化した東海第2原発(東海村)の廃炉を力説しました。
日本原子力発電は来年12月完了をめどに工事を進めており、同年秋には原子炉を試運転させ、事実上の“再稼働”をめざす構えです。
現知事は再稼働をめぐり、「安全性の検証と実効性ある避難計画の策定後に、県民の意見を聞いて判断する」と繰り返す一方で、署名8万6703人分にのぼる「県民投票条例案」の直接請求をめぐり、県議会自民・公明などの否決を「黙認」。「県民の意見を聞く」機会を求めた県民世論に背を向け続け、その姿勢はいまだ変わりません。再稼働には県と立地周辺6市村の「事前了解」が必要です。田中氏は「6市村と連携を強め、再稼働させないことを固くお約束する」と力を込めます。また、現知事が反対から容認に転じた福島第1原発の放射能処理水海洋放出に反対を掲げます。
国言いなり変える
田中氏は現県政を「国言いなりで大型公共事業に湯水のごとく税金を注いでいる」と批判します。大企業の積み出し港となっている常陸那珂港建設(県負担4385億円)をはじめ、昨年は「霞ケ浦導水事業」(同1038億円)の5回目の工期延長と事業費増に同意してきたのが歴代自民党県政と現知事です。
コロナ禍の下、医療体制の充実は緊急の課題です。
ところが大井川県政は一昨年、県内に12カ所あった保健所を9カ所に統廃合。医師数は全国46番目、保健師数は全国で39番目と少ない上、「県地域医療構想」で病床約5千床の削減計画を掲げています。
田中氏は「今の『もうかる県政』と、福祉よりも企業の利益を優先する県政を変える」と主張。保健所の拡充をはじめ、全ての県民への無料のPCR検査、医療機関への減収補てんを公約。「県新産業廃棄物最終処分場」整備の計画撤回を訴えています。
茨城大学で長く「地方自治論」を教えた田中氏。「地方自治を尊重し、憲法を守りジェンダー平等を実現する希望ある県政に変えたい」と決意を語っています。
田中重博(たなか・しげひろ)(74)京都大学大学院卒。茨城大学副学長などを歴任。現在、同大学名誉教授。
(「しんぶん赤旗」2021年8月12日より転載)