10年前の3月11日午後2時46分、東北沖を震源とするマグニチュード9・0の巨大地震が、岩手、宮城、福島の3県をはじめ東日本を襲いました。大津波は沿岸部に壊滅的な被害を与え、制御不能に陥った東京電力福島第1原発は過酷な事故を起こしました。史上例のない複合災害となった東日本大震災の傷はあまりに深く、原発事故の収束は見えません。被災地では懸命な復興への努力が続いていますが、コロナ感染の影響が新たな困難をもたらしています。被災者の暮らしと生業(なりわい)の再建のため、これからも支援を継続し強化をはかることが政府の役割です。
被災者中心の復興貫いて
津波にのみ込まれた地域の被災直後の惨状は、すっかり変わり、整地されました。一方で、かさ上げなどが完了した場所では空き地が目立ちます。復興が進まない現実が示されています。
多くの被災者は、暮らしも生業も被災前の水準を取り戻せていません。時がたつにつれて震災直後と異なる苦難に直面している人が少なくありません。被災者中心の復興が貫けていないからです。
一つが住まいの問題です。家を失った人が入る災害公営住宅は、東北3県で計画された約3万戸が完成しました。仮設住宅から引っ越し「やっと落ち着ける」と暮らし始めた入居者が、家賃引き上げに苦しめられています。入居当初は低く抑えられていますが、居住年数や世帯の収入増で値上がりする仕組みになっているからです。同居する子どもの就職で収入が増えて家賃が上がるため、引っ越しを考えている世帯もあります。
災害公営住宅はもともと高齢者が多い傾向にあり、孤立させない支援が求められています。それにもかかわらず、若い世代が家賃のために退去せざるをえない状況は、安心の地域社会をつくる上からも問題です。家賃引き上げ中止と軽減措置を検討すべきです。住宅再建支援の継続・強化も不可欠です。安定した住まいの確保を公的に支援することは、人口の流出を防ぐ点からも重要です。
被災地の主要産業の漁業や水産加工業、観光業がコロナに直撃されていることは復興の大きな足かせです。こうした時に、復興期間の10年が終わるからと支援を縮小し、打ち切ることは許されません。
東日本大震災の死者は1万5900人、さらに震災関連死は3775人です。地震や津波の中で九死に一生を得たのに過酷な避難生活で多くの人が命を奪われたことは「人災」です。人権と尊厳、健康が保障される避難所などの抜本的な改善、被災者に寄り添った心のケアをできる人的・物的体制拡充を政府が位置付けて行う必要があります。それは次に起こる災害への備えとしても急務です。
「想定外」を繰り返すな
長期化する原発事故被害では国と東電は賠償や地域再生などで最後まで責任を果たすべきです。
東日本大震災は、大量の帰宅難民や広範囲の液状化被害など都市部の災害への脆弱(ぜいじゃく)性も浮き彫りにしました。震災後の10年も地震、水害など大災害が相次いでいます。コロナ禍も感染症に弱い政治・社会の現状を際立たせました。「想定外」で再び悲劇を招いてはなりません。国民の命と安全を守り抜く政治の実現は焦眉の課題です。
(「しんぶん赤旗」2021年3月11日より転載)