福島原発事故・・生業訴訟 双方が上告
東京電力福島第1原発事故をめぐって福島県など4県の住民約3600人が国と東電に損害賠償と原状回復を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で国と東電の責任を認め約10億1000万円の支払いを命じた仙台高裁判決を不服として国と東電は10月13日、上告しました。原告側も同日、上告しました。全国で約30ある同様の集団訴訟で原告数最多の同訴訟は最高裁で争われることになります。
仙台高裁は9月30日、「不誠実ともいえる東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と指摘し、国が規制権限を行使しなかったのは違法として一審福島地裁に続いて国の賠償責任を認定。高裁では国の責任を認めた初めての判断です。賠償を支払う対象を広げ、一審判決の約5億円から2倍の約10億円余の支払いを命じました。
上告した国は、高裁判決で大津波を予見できた根拠にした、国の機関が公表した地震予測「長期評価」に対し「十分な科学的根拠を伴う知見ではない」などとして、「最高裁の判断を仰ぐ必要があるとの結論に至った」としています。東電も「総合的に判断した」と述べています。
「一日も早い救済を」・・生業訴訟 原告「国・東電は傲慢」
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告・弁護団は13日、福島県庁内で記者会見し、仙台高裁判決で断罪された国・東電の上告を受け、原告側も上告したと発表しました。
会見で馬奈木厳太郎弁護団事務局長は、仙台高裁判決が「国に法的責任があると決着をつけた」と強調。「国の責任を前提として、原告にとどまらない全ての被害者に一日も早い救済を実現させるため、上告して争うのではなく、高裁判決を確定させ、早期の救済に向けて協議の場につくよう申し入れてきた。国、東電の上告は大変遺憾」と述べた上で、「われわれも今回の判決で認められていない部分がある。最高裁で私たちの請求により近づいた判決を得るべく上告した」と語りました。
中島孝原告団長は上告した国・東電に対し、「加害者として被害者救済に誠実に向き合うことを先送り、回避しようとする傲慢(ごうまん)な態度」と批判。「いったいどれだけ時間をかければ救済しようと態度を決めるのか。最高裁できっちりと勝ち切りたい」と述べました。
同日、原告側が県に対し、高裁判決を受けて国に法的責任があるとの立場に立つべきだとした要請(1日)をめぐり意見交換。県は「国に判決の内容を精査するよう求める」などと回答しました。
(「しんぶん赤旗」2020年10月14日より転載)