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東電元経営陣3人無罪・・東京地裁判決 国の原子力行政を忖度/「無罪」に絶句 東電刑事裁判 歴史に汚点を残す

 

不当判決を受け裁判所前で開かれた抗議集会=19日、東京都千代田区

東京電力福島第1原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久(79)、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)の3被告の判決が9月19日、東京地裁(永渕健一裁判長)であり、永渕裁判長は3人を「無罪」としました。検察官役の指定弁護士は会見で「国の原子力行政を忖度(そんたく)した判決だ」と批判しました。地裁前では市民らが「不当判決だ」と抗議の声を上げました。

 永渕裁判長は最大争点である海面から10メートルの同原発敷地を超える大津波の襲来が予見できたかについて、被告は信頼性、具体性があるという「認識は有していなかった」と判断しました。

 判決は結語で、事故前の原発の規制について「絶対的安全性の確保までを前提とはしていなかった」と言及。「予見可能性の有無にかかわらず、当然に刑事責任を負うということにはならない」と、重大事故を起こしても責任を問わないとしました。

 公判で検察官役の指定弁護士は、防潮堤の設置や建物浸水を防ぐなどの津波対策をすべきだったと被告らの責任を追及してきました。これに対し判決はこれらの対策をまともに検討せずに、事故を回避するには2011年3月初旬までに「運転停止措置を講じることに尽きる」と断定。運転停止は「相当に困難なものだった」などと一方的な判断をしました。

 指定弁護士が予見可能性の根拠とした02年に政府機関が公表した地震予測「長期評価」の信頼性について判決は、「疑いが残る」などと否定しました。

「無罪」に絶句 東電刑事裁判・・地裁前怒り次々 誰も責任取らぬのか

 不当判決だ―。東京電力福島第1原発の事故で業務上過失致死傷罪に問われた東電旧経営陣3人に、東京地裁が無罪判決を言い渡した19日、地裁前に集まった市民たちから怒りの声がいっせいにあがりました。

 この日、市民らは地裁前を埋めて判決を待ちました。無罪判決が伝わると一瞬、みなが絶句。その直後に、「不当判決だ」の大きな声が響き渡りました。

 市民らは「これだけのことをやって、誰も責任を取らないのか」「司法は死んでいる」と次々に叫びました。

 福島市から京都府京丹後市に避難した宇野朗子さん(47)は、無罪判決にショックを受けながらも「この判決が正しいというなら、この国は企業が起こした大きな罪から、どんなふうに社会を守っていけるのか。この判決を乗り越えていかなくては」と語りました。

 判決後、福島原発刑事訴訟支援団は、東京都内で緊急抗議集会を開きました。集会では、「10年かかろうが、20年かかろうが、真実を訴えて罰したい」「これがどん底、はい上がるしかない。主張し続けることでしか社会を変えていく道はない」などの発言がありました。

 告訴団の河合弘之弁護士は無罪判決について、「原発についての肯定が判決のもとにある。(無罪の)結論を裏付けるため、ほとんど被告側の言うことを採用し、原子力村に忖度(そんたく)している。たたかいは続きます。ひるむことなくがんばりましょう」と呼びかけました。

歴史に汚点を残す・・福島原発告訴団が批判

 東京電力福島第1原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久(79)、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)の3人を「無罪」とした東京地裁判決について、検察官役の指定弁護士は19日、判決後に記者会見を開き、石田省三郎弁護士は「国の原子力行政を忖度(そんたく)した判決だ」と批判しました。控訴するかどうかは判決文を精査して決めると言います。

 石田氏は、原発の規制のあり方について地裁判決が「絶対的安全性の確保までを前提としていなかった」などとしている点を疑問視。原発は事故が起きたら取り返しのつかない事態になります。原発について高度な安全性を求められる電力会社の最高経営陣を免罪したことで、「そういうことをやっていればいいのか、と感じた」と述べました。

 福島原発告訴団の会見も行われ、武藤類子団長は「残念の一言」と述べ、「裁判所は間違った判断をしています。福島の被害者に真摯(しんし)に向き合ったのか」と批判しました。

 海渡雄一弁護士は「歴史に汚点を残す、取り消されるべき判決。この事件をこのまま終わらせるわけにはいかない」と述べました。

(「しんぶん赤旗」年9月20日より転載)